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2017.08.07
特許・実案 欧州 テーマ研究
【欧州】EPにおけるバイオテクノロジー特許について

【欧州】EPにおけるバイオテクノロジー特許について

 最近、EPOは関連規則を改正したうえで、「本質的に生物学的な方法によって得られた植物および動物」を特許性から除外することを決定しました(審議会の決定CA/D 6/17)(2017/6/29)。これにより、本質的に生物学的な方法によって得られた植物および動物が特許性から除外されることが明確になりました。この改正規則は2017年7月1日より施行されています。この結論に至った背景は、生物学的材料の特許性に関して、「植物および動物」自体と「植物および動物の品種」との関係や「産物」と「方法」との関係が複雑に入り組んでわかりにくく、また、ヨーロッパという連合体を背景とした政治的思惑やハーモナイゼーションも絡んでいるようですが、おおよその概略の流れは以下のとおりです。

 EPでは特許性の例外として、「植物および動物の品種」および「植物または動物の生産の本質的に生物学的な方法」は特許が付与されないとして、特許の対象から除外されています(EPC 53条(b))。一方、「微生物学的方法または微生物学的方法による生産物」は特許性の例外から除外され、特許の対象とされています。

 この規定を踏まえ、EPにおけるバイオテクノロジー特許の法的保護に関し、欧州議会および評議会の指令(98/44/EC、いわゆる“Biotech Directive”)が出され(1998/7/6)、その4条で同様に規定していましたが、「植物または動物の生産の本質的に生物学的な方法」によって得られた植物または動物の特許性に関しては明確な規定はありませんでした。また、3条では特許性のある生物学的材料についての積極的定義が規定されておりましたが、その中に「本質的に生物学的な方法によって得られた植物または動物」は含まれていませんでした。一方で、EP締約国の中には、「本質的に生物学的な方法によって得られた植物または動物」を特許性から除外するとの明確な規定を国内法令で定めている国もありました(オランダ、ドイツ、オーストリア、フランス)。

 そのような状況下、拡大審判部審決(G 2/12 - Tomatoes; G 2/13 - Broccoli)が出され(2015/3/25)、『「植物または動物の生産の本質的に生物学的な方法」を特許の対象から除外するEPC 53条(b)の規定は、植物または植物材料に係る物のクレームの特許性に否定的な効果を与えない;さらに、物のクレームが植物の生産の本質的に生物学的な方法を構成要件として含んでいても、また、当該方法を特徴とするプロダクト・バイ・プロセス・クレームであっても、特許の対象から除外されない。』とされました。すなわち、「本質的に生物学的な方法」であってそれゆえ特許されないものである当該方法(植物の選択および交配)を用いて得られた産物に特許の可能性が示唆されました。しかし、そのような産物の特許性の承認は、上記締約国の国内法令での「本質的に生物学的な方法によって得られた植物または動物」を特許性から除外するとの規定との齟齬をきたし、また、遺伝資源へのアクセスに関し、EU植物品種法下で植物品種に与えられている法的保護と衝突するおそれがあります。

 このことを懸念した欧州委員会は、バイオテクノロジー発明の法的保護に関する欧州議会および評議会の指令(98/44/EC)に対し通知を出し(2016/11/3)、“Biotech Directive”(98/44/EC)を採用した際のEU立法者の意図は、本質的に生物学的な方法によって得られた産物(植物/動物およびその部分)を特許性から除外することであったとの見解を表明しました。

 上記のような本質的に生物学的な方法によって得られた産物の特許性に関する法的不安定性に鑑み、EPOは、本質的に生物学的な方法によって得られた植物または動物の発明に関する審査および異議申立の全ての手続きの停止を決定し(2016/12/12)、関連する審査手続きはこれまで停止されていました。

 その後、最終的にEPOは関連規則を改正したうえで(2017年7月1日施行)、本質的に生物学的な方法によって得られた植物および動物を特許性から除外することを決定しました(2017/6/29)。

2017年8月4日
        (文責:山中伸一郎)

 

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