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【カナダ】 非侵害代替品の抗弁と損害額の算定に関する判例

IPニュース 2015.10.19
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[判示事項]

2015年7月23日、Apotex Inc. et al. v. Merk & Co et al.事件において、カナダの連邦控訴裁判所は、連邦裁判所が非侵害代替品の入手可能性は損害額の算定において法的関連性がないと判断したことに対し、非侵害代替品の入手可能性は損害額を評価するうえで法的に関連性があるとする一方、Apotexは、同社が、非侵害代替品の利用を推し進めることができ、かつ推し進めたであろうことを立証しなかったとして、Apotexの控訴を棄却した。

[事件の概要]

・当事者

 控訴人(被告):Apotex Inc. および Apotex Fermentation Inc. (「Apotex」)

 被控訴人(原告):Merck & Co., Inc. および Merck Canada Inc. (「Merck」)

・Merck & Co., Inc.は抗コレステロール薬であるロバスタチンの特許を所有していた(既に権利期間満了により失効している)。この特許はプロダクト・バイ・プロセス特許である。Merckは、Apotexがこの特許権を侵害しているとして侵害訴訟を提起し、連邦裁判所(第一審)は、特許は有効であり、かつ侵害されていると判断した。控訴審では、侵害論は審理されず、損害賠償額の認定に関してのみ審理された。

・連邦裁判所(第一審)は、非侵害代替品の入手可能性は損害賠償額を評価するうえで関連のあるファクタであるという、Apotexの反論を退けた。連邦裁判所は、被告であるApotexが非侵害代替品(権利範囲に属しない別のプロセスによるロバスタチン)を利用できたはずである(実際には利用しなかった)という事実は関連性がないとし、その理由として、侵害者の仮想的な行動ではなく、侵害者の実際の行為に焦点を合わせるべきであるということを挙げた。

・連邦控訴裁判所は、入手可能な非侵害代替品を考慮することなく、逸失利益に関する損害賠償額を算出した場合には、特許権者は、侵害製品が存在しなかった場合よりも良い状態におかれるとした。なぜならば、(侵害製品が)ないと仮定した世界(but for world)において、侵害者は、特許権者の販売を合法的に減少させたであろう、非侵害代替物を製造および販売することができ、また、そうしたであろうといえるからである。

 連邦控訴裁判所は、第一審の上記判断は誤っているとし、「完全な賠償」には、侵害者または他の競合者が、侵害行為がなかったならば、販売することができ、かつ販売したであろう非侵害製品についての考慮が必要であり、また、そのような合法的な競争が特許権者の販売をどの程度減少させたであろうかについての考慮が必要であるとした。

・さらに、連邦控訴裁判所は、非侵害代替品の抗弁を申し立てる侵害者は、以下の4つの事実を立証しなければならないとした。

(ⅰ)申し立てられた非侵害代替品は、真の代用品、したがって本当の代替品であるか?

(ⅱ)申し立てられた非侵害代替品は、経済的に実行可能であるという意味で、真の代替品であるか?

(ⅲ)侵害時に、侵害者は、非侵害製品を販売することができたか?

(ⅳ)侵害者は実際に非侵害代替品を販売したはずであったか?

・本件において、連邦控訴裁判所は、Apotexが非侵害代替品を製造できたであろうことは認めたが、Apotexは「but for」の世界で非侵害代替品の利用を推し進めたはずであったということを立証していないとした。その理由として、証拠記録から認められる以下の点を指摘している:

-Apotexの侵害の規模

-Apotexのサプライヤが侵害品であるロバスタチンをApotexに供給していたことを、Apotexが知っていたこと

-ApotexがMerckの特許が無効であると信じていたこと

-ロバスタチン製品が侵害であることを知っていたならば、Apotexは非侵害プロセスを使用してロバスタチンを製造したであろうということを示す証拠が欠如していること

[その他]

 本件は、カナダの連邦控訴裁判所が、特許侵害の損害賠償額の評価において、非侵害代替品の抗弁が許されることを初めて認めたケースとされている。本判決が実際に損害賠償額の認定にどれほどの影響を与えるのかは、まだ明確ではない。

判決文

以上

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