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【欧州】欧州特許庁審判手続規則の改正(2020年1月1日施行)

IPニュース 2019.10.18
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 欧州特許庁審判手続規則の改正が、2020年1月1日に施行されます。審判手続規則は合計25条からなりますが、規則第11条、規則第12条及び規則第13条の改正が重要です。

<重要な改正点>
規則第11条(差し戻し)
 規則第11条は、「審判部は…特別な理由がない限り、事件を第一審に差し戻す」から、「審判部は…特別な理由がない限り、事件を第一審に差し戻してはならない」と改正されました。
 新しい規定の目的は、審判部と第一審の部門(審判請求の対象となる決定を行った部門。すなわち審査部又は異議部)との間のキャッチボール現象の発生を最小限にして、欧州特許庁での手続き全体の過度な長期化をなくすことです。改正後は、事件が第一審へ差し戻されずに、審判部が最終決定を行うことが普通になります。

規則第12条(審判手続の基礎)
 規則第12条に(2)が新しく設けられて、「当事者の審判事件は、審判対象の決定の基礎となる請求、事実、理由、主張及び証拠を対象とする」と規定されました。
 確立された判例法に従って、審判手続の性質と範囲の一般的な定義が設けられました。

 改正された規則第12条(4)において、「(2)の要件を満たしていない当事者の審判事件の部分は、…補正とみなされる。そのような補正は、審判部の裁量によってのみ認められうる」と規定されました。
 改正前は審判部で審理されるとされていた事項が、改正後は補正とみなされることがあり、裁量によってのみ審理されることになります。

規則第13条(当事者の審判事件に対する補正)
 規則第13条(1)は、「審判部は、審判理由又はそれに対する応答を提出した後、当事者の事件に対するいかなる補正も認めない裁量権を有する」から、「審判理由又はそれに対する応答を提出した後、当事者の事件に対する補正は審判部の裁量によってのみ認められる。当事者は、審判手続のこの段階で補正を提出する理由を提供しなければならない」と改正されました。
 審判理由又はそれに対する応答を提出した後は、新たな請求などの追加が容認されにくいことに変更はありません。

 改正された規則第13条(2)は、「審判部がEPC規則第100条(2)に基づく通知で指定した期間の満了後に、又は口頭審理への召喚状の通知後に行われた当事者の審判事件の補正は、…原則として考慮しないものとする」と規定しています。
 召喚状の通知後などにおいて、補正は、原則として考慮されないことになります。

<補足説明>
欧州特許庁での審判手続における3つの段階
 欧州特許庁での審判手続は、時期によって3つの段階に分けられます。

 第1の段階は、審判の理由及びそれに対する応答に関しています。現在の規則の下では、審判の理由及びそれに対する応答において提示されたすべてのものは、審判手続において審理されます。しかし、規則改正により、新しい請求、事実、理由、主張及び証拠を当事者が審判に持ち込む際の柔軟性が制限されます。改正規則は、当事者が事件の補正を特定すること、及び審判で補正を提出する理由を提示することを要求しています。出願又は特許が補正される場合、出願人又は特許権者が提出した補正の根拠を示すこと、及び拒絶を克服する理由を説明することが要求されます。

 第2の段階は、審判の理由とその応答が提出された後で、審判部からの通知で指定された期間の満了又は召喚状の通知の前までの期間です。現在の規則の下では、審判部は、この段階での審判の理由とそれに対する応答について補正を容認しない裁量権を持っています。新しい審判手続規則第13条(1)では、補正の容認は裁量のみに依存します。さらに、当事者は、補正を提出する理由を提供しなければなりません。

 第3の段階は、審判部からの通知によって設定された期限又は召喚状の通知の後になります。現在の規則において、この最終段階での審判の補正は困難であり、口頭審理の延期なしには対処できない論点を提起しない場合にのみ許可されます。改正規則の下において、この最終段階での補正は原則として考慮されず、補正を行うことは非常に困難です。

<注意すべき事項>
 査定系・当事者系ともに第一審(審査部・異議部)での対応がこれまで以上に重要になります。
 審判の理由及びそれに対する応答に関する第1の段階において、可能な限りの補正、証拠、主張などを記載しておくべきです。第2の段階、そして第3の段階という後ろの段階になるほど、新たな補正、証拠、主張などが考慮されなくなります。

 改正規則は、審判に既に係属している事件にも適用されます。したがって、現在審判係属中の審判事件について、新たな請求、事実、理由、主張及び証拠となる補足物があるならば、施行前、すなわち2019年12月31日までに追加提出しておくことが賢明です。

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