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【米国】発明者としてAIが指定された出願に対する米国特許庁の判断

IPニュース 2020.08.17
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 発明者としてAIが指定された出願における、発明者の要件に関する米国特許庁の判断について、簡単に紹介します。

1.出願
  出願番号:16/524,350
  出願日:2019年7月29日
  発明の名称:Devices and Methods for Attracting Enhanced Attention

 上記出願の願書(Application Data Sheet、以下「ADS」という)では、姓を「人工知能によって生成された発明」、名を「DABUS」とするAIが発明者として特定されている。また、ADSには、譲受人「Stephen L.
Thaler」が出願人として特定されている。なお、AIが発明者としてサインした宣誓書は当然なく、代わりにStephen L. ThalerによってAIが発明者であるとの供述書が提出された。

2.出願の経過
(1)上記出願に対し、2019年8月8日に、「発明者が署名した宣誓書が提出されておらず、ADSにおいて発明者を本名で特定していない」として出願の欠落部分の補完を求める通知が出願人へ発行された。

(2)2019年8月29日、請願書が出願人から提出され、上記通知が不当または無効であるとして取り消すことを求める方式担当審査官の上司によるレビューが要求された。

(3)2019年12月13日に、方式審査部から出願の欠落部分の補完を求める2回目の通知が発行され、2019年8月29日の請願書は、2019年12月17日に発行された決定で請願部により却下された。

(4)2020年1月20日に出願人から再び請願書が提出され、2019年12月17日発行の請願部の決定に対する再検討が要求されたが、2020年4月27日に以下の理由から拒否された。これは最終決定を構成しており、再審査のリクエストは受け付けられないとされている。

3.発明者としてAIを認めないとした理由
(1)条文
35 U.S.C. § 100(f) :
The term “inventor” means the individual or, if a joint invention, the individuals collectively who invented or
discovered the subject matter of the invention.

35 U.S.C. § 100(g):
The terms “joint inventor” and “coinventor” mean any 1 of the individuals who invented or discovered the subject matter of a joint invention.

35 USC §101:
Whoever invents or discovers any new and useful process, machine, manufacture, or composition of matter, or any new and useful improvement thereof, may obtain a patent therefor, subject to the conditions and requirements of
this title.

35 USC §115(b):
An oath or declaration under subsection (a) shall contain statements that…such individual believes himself or
herself
to be the original inventor or an original joint inventor of a claimed invention in the application.

35 U.S.C. § 115(h):
Any person making a statement required under this section may withdraw, replace, or otherwise correct the
statement at any time.

上記条文を引用して、発明者とは個人(“individual”)または人(“person”)を指し、発明者は自然人でなければならず、機械(“machine”)は発明者になり得ないとされた。また、同様の理由から宣誓または宣言(an oath or
declaration)を行う発明者は、自然人でなければならないとされた。

(2)判例
 CAFC(合衆国連邦巡回区控訴裁判所)においても、特許法では発明者が自然人であることが要求されている。例えば、“Univ, of Utah v. Max-Planck-Gesellschaft zur Forderung der Wissenschaften e.K” の判決では、州は発明者とはなり得ないとされている。また、“Burroughs Wellcome Co. v. Barr Labs., Inc.. 40 F.3d 1223, 1227-28 (Fed.Cir.1994)” の判決では、発明者は自然人でなければならず、企業などであってはならないとされている。

4.USPTO(米国特許庁)とEPO(欧州特許庁)との差異
 EPOにおいても発明者としてAIが指定された出願に対して、発明者としてAIを指定することは認められないとする決定がされた。
 従って、USPTO(米国特許庁)とEPO(欧州特許庁)とにおいて、発明者としてAIが指定された出願の取り扱いは、結果としては同じであると言えるが、以下の点でこれらの庁の見解は完全に一致しているとはいえない。
 EPO:AI(DABUS)が発明を創作したことについては認定されたが、出願手続きにおいてAI(DABUS)を発明者として指定することはできないとされた。
 USPTO:上記の出願に係る発明を実際に誰が(または何が)創作したかに関しての決定すら行っていない。

(参考)
USPTO HP – Decision on Petition of Application no. 16/524350

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