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【中国】特許審査基準改正(2021年1月15日施行)

IPニュース 2021.02.10
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 中国において、特許等の審査基準に相当する「専利審査指南」が一部改正されました。
 本改正は、第二部分第十章「化学分野の特許出願の審査に関する若干の規定」の改正であり、具体的な改正項目および改正内容は、以下に記載の通りです。本改正は2021年1月15日から施行されます。

[1]補足資料として追加提出された実験データの審査基準に関する改正
3. 化学発明の充分な開示
3.5 実験データの補足資料としての追加提出について
 補足資料として追加提出された実験データの一般審査原則として、「専利法第22条第3項(進歩性)、第26条第3項(明細書の記載要件)などの要件を満たすために追加提出された実験データについて審査するべきである」ことを明確にした。以下の2つの審査例が審査指南に記載された。
【例1】
 請求項に係る発明は化合物Aである。最初の明細書には、化合物Aの製造方法における実施例、血圧降下作用、および血圧降下の活性を測定するための実験方法は記載されているものの、実験結果データは記載されていない。出願人は、当該発明が明細書に十分に開示されていることを証明するために、化合物Aの血圧降下効果の実験データを補足資料として追加提出した。当業者にとって、最初の明細書の記載によれば、化合物Aの血圧降下作用は明細書に開示されているものであり、追加提出された実験データにより証明しようとする技術効果は、最初の明細書から得られるものである。ここで、追加提出された実験データは、進歩性を審査する時も審査すべきである。
【例2】
 請求項に係る発明は式Iで示される化合物である。最初の明細書には、式Iおよびその製造方法および、式Iで示される具体的な化合物A、Bの製造方法における実施例が記載されているほか、式Iの抗腫瘍作用、抗腫瘍活性を測定するための実験結果データも記載されており、該実験結果データには、腫瘍細胞に対する実施例の化合物のIC50値は10~100nMの範囲内であることが記載されている。出願人は、該発明が進歩性を有することを証明するために、対照実験データを補足資料として追加提出し、化合物AのIC50値は15nMであるのに対し、引用文献1に記載の化合物のIC50値は87nMであることを示した。当業者にとって、最初の明細書の記載によれば、化合物Aの抗腫瘍作用は明細書に開示されているものであり、追加提出された実験データにより証明しようとする技術効果は、最初の明細書から得られるものである。この場合、審査官はさらに、追加提出された実験データを組み合わせて請求項に係る発明が進歩性の要件を満たすかどうかを分析する必要がある。

[2]組成物の請求項の審査基準に関する改正
4. 化学発明の請求項
4.2.3 組成物の請求項における他の限定
 明細書に一つの性能または用途のみ記載されている組成物について、請求項において性能限定または用途限定する必要があるかどうかは具体的状況によって判断するべきであることを明確にした。ただし、薬品請求項のほとんどは用途限定型として記載しなければならない点には変更はない

[3]化合物の新規性の審査基準に関する改正
5. 化学発明の新規性
5.1 化合物の新規性
 化合物の新規性の判断について、引用文献に本発明の化合物が言及されていれば、新規性を有してないとみなされたが、今回の改正により、引用文献に化合物の化学名称、分子式(または構造式)などの構造情報が記載されていることで、当業者により本発明の化合物が開示されていると認められた場合に新規性を有してないと判断されることになった。

[4]化合物の進歩性の判断に関する改正
6. 化学発明の進歩性
6.1 化合物の進歩性
(i) 化合物発明の進歩性の判断について、「本発明の化合物と最も近い先行技術の化合物との間の構造的差異を確定し、そのような構造変更によって得られる用途および/または効果によって本発明により実際に解決しようとする技術課題を確定し、その上で先行技術の全般においてこのような構造変更によって該技術課題を解決するという技術的示唆があるかどうかを判断する必要がある」とし、他の発明と同様に「三歩法」により判断することを明確にした。
(ii) 予測できない効果を、進歩性判断の補助的な要因としてその位置付けを明確にした。

[5]明細書の十分な開示に関する改正
9.2 明細書の十分な開示
9.2.1 生物材料の寄託
 ブダペスト条約で承認された国際寄託機関として新たに一箇所を追加した。

[6]モノクローナル抗体の請求項の作成に関する改正
9.3 生物技術分野における請求項
9.3.1 遺伝子工学に関する発明
9.3.1.7 モノクローナル抗体
 モノクローナル抗体の請求項について、「それを生成するハイブリドーマによる限定」から、「構造特徴による限定またはそれを生成するハイブリドーマによる限定」に改正された。

[7]バイオ分野の発明の進歩性に関する改正
9.4 新規性、進歩性および実用性の審査
9.4.2 進歩性
 バイオ分野の発明の進歩性判断について、「進歩性の判断において、さまざまな保護対象に対する具体的な限定によって本発明の最も近い先行技術と区別される特徴を確定し、該特徴により本発明が達成できる技術効果に基づき、本発明により解決しようとする技術問題を確定し、そして、先行技術の全般において示唆があるかどうかを判断し、これに基づき、本発明が先行技術に対して自明であるかどうかを判断する」とし、他の発明と同様に「三歩法」により判断することを明確にした。

(参考)
Jetro HP:「専利審査指南」の改正に関する国家知識産権局の決定(日本語仮訳)

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