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【速報】フェアユースについての米国著作権侵害事件の判決紹介

IPニュース 2021.04.09
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判決:米国最高裁2021年4月5日判決 Google LLC v. Oracle America, Inc.

 米国オラクル社が、オラクル社の有する著作権を侵害するものとして、米国グーグル社に対し行っていた訴訟について、米国連邦最高裁判所の判決が2021年4月5日にあり、6対2の評決でグーグル社のコピーを「フェアユース」に該当するものとし、米国著作権法に違反しないと判断されました。
 本件訴訟は、2005年、グーグル社がスマートフォン向けのOS「アンドロイド」を開発する際、オラクル社の有するアプリケーション・プログラム・インタフェース(API) であるJava SEから、宣言コードを約11,500行コピーしたとして、オラクル社がグーグル社を訴えたものです。

 本件訴訟では、(1)Java SEのようなAPIの所有者が、APIからのコードのコピー行為を著作権で保護できるのか、(2)グーグル社のコピー行為は著作権法上許される「フェアユース」に該当するのかが争点とされました。第2審の米国連邦巡回控訴裁判所では、(1)著作権で保護されるとしたうえで、(2)グーグル社のコピー行為は、「フェアユース」に該当せず、オラクル社の著作権を侵害するものであると判断されておりました。
 米国連邦最高裁判所の判決(Breyer判事の判示)では、議論の目的で(1)APIからのコードのコピー行為についても、著作権で保護され得るとしたうえで、(2)の「フェアユース」に該当するか否かについて、以下の4つの判断要素を示し、それに従い判断を行いました。
 (I)著作物の性質
 (II)市場への影響
 (III)使用の目的と特徴
 (IV)著作物が使用された部分の量とその部分の本質性

 まず、(I)の判断要素について、コードのコピーされた行は、ユーザインタフェースの一部をなすものであること、APIのコードは実際的には機能であり、創作性が認められる他のプログラムのコードとは異なるものであること、インタフェースの一部として、今回コピーされた行は本質的に著作権で保護されないアイデアと結びつくものであること等から、多くのプログラムと比べて著作権の本質から離れている。そのような著作物の性質は、「フェアユース」に該当する方向に評価できる、としました。
 また、(II)の判断要素については、グーグル社の新しいスマートフォン向けのOS「アンドロイド」が、Java SEの代替として用いられてはいないこと、オラクル社が依然として異なる市場から収益を上げていることから、アンドロイド市場におけるオラクル社側の競争力は不明であり、収益減をもたらす原因、及び利用者が受ける創作性に関する悪影響のリスクを組み合わせてみると、グーグル社のコピー行為は、「フェアユース」に該当する方向に評価できる、としました。
 次に、(III)の判断要素については、その行為が進歩させる目的や異なった特徴を伴う新しい何かを付加するか否かで決めるべきとし、グーグル社のコピー行為は、プログラマが異なったコンピュータ環境で、慣れ親しんだコンピュータ言語のまま作業できるのに必要な限度で行われたにすぎず、グーグル社の目的は、スマートフォンという異なったコンピュータ環境のための異なったシステムを構築することにあり、コンピュータプログラムの発展を促進させるものである。グーグル社のコピー行為の目的及び特徴は変革をもたらしており、その点においてフェアユースに該当する方向に重みづけられる、としました。
 最後に、(IV)の判断要素については、グーグル社のコピーした約11,500行は、全行(2,860,000行)の0.4パーセントにすぎないこと、グーグル社のコピー行為は、創作性や美的感性のために行ったものではなく、プログラマが新しいスマートフォンコンピュータ環境で彼らの能力を発揮することを可能にするために行ったものであることを指摘し、コピーされた量が、根拠を有しかつ変革を起こすという目的に従う量であれば、コピーされた部分は本質的ではないと言え、「フェアユース」に該当する方向に重みづけられるとしました。

 以上の各判断要素を踏まえ、米国連邦最高裁判所は、グーグル社のコピー行為は「フェアユース」に該当し、著作権を侵害しないとの判決を下しました。

※ ソフトウェアの機能や、そのソフトウェアが管理するデータなどを、他のプログラムから呼び出して使用するための手順、データ形式などの仕様。

(参考)
米国最高裁HP:Google LLC v. Oracle America, Inc. 2021年4月5日判決文 

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