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【欧州】拡大審判部審決G 1/19のご紹介

IPニュース 2021.06.10
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 2021年3月10日に、コンピュータ実施発明に関して、拡大審判部にて審決G 1/19がされました。以下に、この審決の内容についてご紹介いたします。

 ケース番号:G 1/19
 事件名:Pedestrian simulation
 審決日:2021/3/10
 出願番号:03793825.5

(1)概要
 コンピュータ関連発明(特に、コンピュータにより実行されるシミュレーションに関する発明)の特許可能性について、判断された。

(2)付託された質問事項
[質問1]進歩性の評価において、コンピュータ利用のシミュレーションそれ自体がクレームされている場合、技術的システム又はプロセスのコンピュータ利用のシミュレーションは、コンピュータ上でのシミュレーションの実装を超えて、技術的効果をもたらす技術的課題を解決するものといえるか。

[質問2A]質問1がYesの場合、クレームされたコンピュータ利用のシミュレーションそれ自体が技術的課題を解決するか否かの評価基準は何か。
[質問2B]特に、当該シミュレーションが、シミュレーションの対象となるシステム又はプロセスの背後にある技術原理に少なくとも部分的に基づいていれば十分か。

[質問3]コンピュータ利用のシミュレーションが設計プロセスの一部として、特に設計の検証のためのものとして、クレームされている場合、質問1および2に対する回答はどうなるか。

(3)回答
[回答1](Yes)クレームされた、技術的システム又はプロセスのコンピュータ利用のシミュレーションそれ自体は、進歩性判断の目的においては、コンピュータ上でのシミュレーションの実装を超えた技術的効果をもたらすことにより、技術的課題を解決しうる。

[回答2A]質問事項2Aのような問いは受け付けられない。
[回答2B]上記判断において、当該シミュレーションが、シミュレーションの対象となるシステム又はプロセスの背後にある技術原理に全部又は一部基づいているということだけでは十分ではない。

[回答3]コンピュータ利用のシミュレーションが設計プロセスの一部として、特に設計の検証のためのものとして、クレームされている場合であっても、質問1および2に対する回答は変わらない。

(4)備考
 EPOのコンピュータ利用発明の特許審査における進歩性の判断では、物理的な実体と直接の結びつきのないコンピュータ利用のシミュレーションの発明についても技術的といえる内容が含まれるか否かが問題となっていた。
 拡大審判部は、長年にわたり確立されたCOMVIKアプローチをコンピュータ利用のシミュレーションの発明に対しても適用し、「コンピュータ利用のシミュレーションに関する発明は、クレームされた特徴が発明の技術的性質に貢献するか否かに関する問題も含め、他のコンピュータ利用発明と同じ基準によって評価されなければならない」とした。

(参考)COMVIKアプローチ
 審決T641/00によって確立されたCase Law。技術的特徴と非技術的特徴とが組み合わされたコンピュータ実施発明においては、技術的特徴のみに基づいて発明の進歩性が評価される。非技術的な特徴は、単に非技術的課題の解決のみに貢献するとみなされた場合、発明の進歩性の判断に考慮されない要素となる。一方、単独では非技術的に見える場合であっても、発明の文脈において技術的な効果を生み出すことに貢献するとみなされる特徴は、発明の技術的性質に貢献すると判断され、発明の進歩性の評価において考慮される。

(5)実務上の留意点
 G1/19の審決を受けて、EPOのガイドラインが改訂されると予想される。実務上、どのように考えればよいのかについては、その改訂を待つ必要があると考える。なお、審決で示された内容を踏まえると、以下の点に留意が必要である:
 ・シミュレーションは、他のコンピュータ利用発明と同じ基準によって評価されること。
 ・評価に当たっては、クレームされた特徴が発明の技術的性質に貢献するか否かに関する問題も考慮されること。
 ・コンピュータ上でのシミュレーションは、物理的な実態とは直接リンクされないため、単にコンピュータを用いたという程度の技術的効果では進歩性があるとは認められず、
それを超える、さらなる技術的効果が必要とされること。
 ・シミュレーション発明については、明細書において、技術的効果を十分主張しておくことが必要と考えられること。

(岡部 英隆)

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