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【米国】契約中のフォーラム条項とIPR申請との関係が争われた事例:Kannuu事件

IPニュース 2021.11.12
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判決:Kannuu Pty Ltd., v. Samsung Electronics Co., Ltd. (Fed. Cir. 2021)

・秘密保持契約(NDA)におけるフォーラム選択条項(契約に関する係争は特定州の裁判所においてのみ争うこととした条項)にIPR申請(USPTOに係属し、特定州の裁判所で争われるものではない)が含まれるかどうか、すなわち、このフォーラム選択条項がある場合にIPR申請が許されるかどうかが争われた事例。地裁およびCAFCとも、IPR申請は問題となっているフォーラム選択条項の対象外であると判断した。
・フォーラム選択条項が以下に記載するとおり、かなり漠然とした内容であったため、一方当事者のIPR申請を妨げるものではないという判断に至ったものと考えられる。但し、CAFC判決では反対意見も示されており、将来、同様の争いが生じる可能性もある。本件が最高裁へ上訴されるかどうかは不明。
・なお、問題となったNDAは2012年に締結されており、当時はIPRがまだ開始されていなかった、または開始間もなかったことが条項の内容に影響を及ぼした可能性はある。

原審の概要
・原審は、Kannuu Pty Ltd. v. Samsung Electronics Co., Ltd., No 19-civ-4297 (S.D.N.Y Jan. 19, 2021)。 Samsung Electronics Co., Ltd(以下、Samsung社)は、Kannuu社の検索ナビゲーション技術について問い合わせを行った際に、Kannuu社と秘密保持契約(NDA)を2012年に締結。
・この秘密保持契約には、「Any legal action, suit, or proceeding arising out of or relating to this Agreement or the transactions contemplated hereby must be instituted exclusively in a court of competent jurisdiction, federal or state, located within the Borough of Manhattan, City of New York, State of New York and in no other jurisdiction. . . . 」(本契約またはここで企図された取引に起因する又は関連する法的措置、訴訟または手続は、ニューヨーク州ニューヨーク市マンハッタン区内に所在する連邦または州の管轄裁判所のみで開始されなければならず、他の管轄裁判所では開始されない)というフォーラム選択条項が含まれていた。
(*フォーラム選択条項:法的紛争を解決するための裁判所や場所(=フォーラム)を指定する契約上の合意。例外的な状況が存在しない限り支配的であるとされている。)
・その後、Kannuu社は、Samsung社に対し、特許侵害訴訟を提起し、Samsung社はIPRを請求した。Kannuu社は、上記フォーラム選択条項によれば、Samusung社がKannuu社の特許に対し、上記管轄裁判所外であるUSPTOにIPRを申請することは禁止されており、Samsung社のIPR申請は認められるべきではないとPTABに対して主張したが、PTABはこれを判断することを拒否。
・そこで、Kannuu社はニューヨーク連邦裁判所(S.D.N.Y)にSamsung社のIPR申請を制限する仮差止命令を申し立てた。S.D.N.Yは、IPRの申請は、契約条項の範囲に入らないと判断した。これを不服として、Kannuu社が控訴。

控訴審の概要
・控訴審では以下が争点となった。
(i)この特定の条項は、Samsung社がIPRを申請することを禁止しているかどうか。
(ii)禁止しているのであれば、当該条項は、特許異議申立を支持する公共政策に違反しているため、執行不能であるかどうか。
Kannuu社およびSamsung社ともに、自社の立場を支持するためのアミカスブリーフを大量に提出したとされている。特に上記(ii)が認められれば、影響が大きいと予想されたため、CAFC判決が出る前から米国では注目を集めていた。

控訴審判決
地裁の判決を維持。主な理由は以下のとおり。
・フォーラム選択条項には、IPR手続きが包含されない。
・IPRとNDAとの関連性は、開示された特定の情報の機密性を維持することを目的とした契約であるNDAのフォーラム選択条項によってIPR手続きが排除されるには、あまりにも希薄であり、また、特許権とは関連しない。
・フォーラム選択条項はIPR手続きには適用されないため、Kannuu社は交渉で得たフォーラムを奪われていない。
・公共の利益からは、Samsungが問題となっている特許の有効性をPTABにて争うことが好ましい。

(参考)
CAFC HP:Kannuu事件判決文

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