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【米国】明細書の実施例の記載に関するUSPTOの注意喚起

IPニュース 2022.01.06
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 米国特許商標庁(USPTO)は、2021年7月1日付の連邦官報(Federal Register)において、明細書の実施例の記載について注意喚起しました。

1.概要
 米国では、Prophetic Example(データの裏付けのない実施例)をWorking Example(データの裏づけのある実施例)と書き分けることが義務付けられています。
(参考:MPEP 608.01(p))
 USPTOは、連邦官報において、それらの実施例を明確に書き分けて適切に提示すべきであるとの注意喚起をしました。

2.Prophetic ExampleとWorking Exampleの違い
「Prophetic Example」とは、実際には行われていない(つまり、データの裏付けのない)実施例のことであり、合理的に予想される結果を記述します。「予言的実施例」、「机上の実施例」、「論理的実施例」などと訳されます。Paper Example(ペーパーイグザンプル)と同じ意味です。
「Working Example」とは、データの裏付けのある実施例のことであり、実際に行われた作業や実験結果に基づいています。
 Working Exampleは「過去形」で記載します。一方、Prophetic Exampleは「過去形」で記載すべきではありません。なお、Prophetic Exampleは「現在形」または「未来形」で記載することができます。
(参考:MPEP 608.01(p)、MPEP 2164.02)

3.記述要件および実施可能要件
 特許出願の内容が完全であるためには、出願日の時点において、当業者がその発明を製造および使用できる記載を含む明細書を含んでいる必要があります(35 U.S.C. 112(a))。明細書には、少なくとも1つの実施形態または実施例を記載しなければなりません。なお、過度な実験なしに、当業者が発明を実施できるように開示されていれば、明細書に実施例を記載する必要はありません(参考:MPEP 2164.02)。
 裁判所は、記述要件および実施可能要件を満たすためにProphetic Exampleを使用することを認めました(Allergan, Inc. v. Sandoz Inc., 796 F.3d 1293, 1310 (Fed. Cir. 2015))。

4.出願人の開示義務
 実際には、実験が行われていなかったり結果が得られなかったにも拘わらず、特許出願書類に、ある結果が「実行された(was run)」または実験が「行われた(was conducted)」と故意に記載することは、詐欺(fraud)となります(Apotex Inc. v. UCB, Inc., 763 F.3d 1354, 1362 (Fed. Cir. 2014))。Prophetic ExampleとWorking Exampleを明確に区別して記載することで、出願人の開示義務に関する問題を回避することができます。
(参考:MPEP 2004 項目8)

5.最良の対応方法
 特許出願書類を作成する際には、読者が実際の結果と予測される結果を容易に区別できるように、実験および試験結果の記述には、適切な時制を採用するように注意しなければなりません。曖昧さを避けるために、データの裏付けのない実施例を「prophetic」と表示するかまたはその他の方法によって、Working Exampleと区別することが最良の方法です。

<参考>
Federal Register/Vol. 86, No. 124/Thursday, July 1, 2021/Notices:
 ”Properly Presenting Prophetic and Working Examples in a Patent Application”
・MPEP 608.01(p) “Completeness of Specification“:
 II. Simulated or Predicted Test Results or Prophetic Examples
・MPEP 2164.02 “Working Example“:
・MPEP 2004 “Aids to Compliance With Duty of Disclosure“:Item 8.

(大釜 典子)

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