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【米国】複数のIPRが係属しているときの315条(e)(1)(禁反言)の適用について

IPニュース 2022.07.05
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判決:Intuitive Surgical, Inc. v. Ethicon LLC, No. 2020-1481 (Fed. Cir. Feb. 11, 2022)

判決概要:
 一つの特許の同じクレームにつき、3つのIPRが請求され、うち2つのIPRにおいて先行して特許維持の最終決定書(Final Written Decision:FWD)が発行されたときに、PTABが、残りのIPRの手続を315条(e)(1)の規定により終了させるというFWDを発行したことに、違法性はない。

IPRの概要:
・Ethicon LLC (以下「Ethicon」)が所有する特許の同一クレームに対し、Intuitive Surgical, Inc.(以下、「Intuitive」)が、3つのIPRを提出した。3つのIPRはそれぞれ異なる先行技術に基づく自明性の欠如を主張するものであった。
・PTABは、3つのうち2つのIPR(便宜的にIPR-1、IPR-2)につき、いずれも特許維持のFWD(=無効ではない旨のFWD)を先に発行し、残りの1つのIPR(便宜的に、IPR-3)については、315条(e)(1)を適用し、IPR-3で主張された無効理由は、IPR-1、IPR-2において「合理的に見て提起することができたと思われる理由」であるとして、IPR-3の手続きを終了させる旨のFWDを後で発行した。

315条(e)(1)
「(e) 禁反言
(1) 庁における手続
 第318条(a) に基づく最終決定書に帰着する,本章に基づく,特許クレームについての当事者系再審査の請願人又はその真の利益当事者 若しくは 請願人の利害関係人は,請願人が前記の当事者系再審査中に提起した又は合理的に見て提起することができたと思われる理由に基づいて,そのクレームに関し,庁における手続を請求又は維持することはできない。」

控訴審(CAFC)の概要:
・IPRの請願人であるIntuitiveは、最後にFWDが発行されたIPR-3につき、禁反言は適用されるべきでないと主張し、その理由として以下を挙げた。
1) 14,000語という請願書の字数制限により、最初の2つのIPRですべての無効理由を提起することは不可能であった。
2) 315条(e)(1)の意味におけるIPRの期間中(=IPR-1、IPR-2の係属中)に、IPR-1、IPR-2において、IPR-3で主張した無効理由を組み込む補正は禁止されている。

・CAFCの判断は以下のとおり
 Intuitiveは、2つのIPR(IPR-1、IPR-2)において、すべての無効理由をまとめられたはずであるし、(仮にまとめられなかったとしても)Intuitiveは、315条(e)(1)の禁反言を避けるために、315条(d)に基づき、複数のIPRの併合を求めることができたし、あるいは無効理由ごとにIPRを分けるのではなく、クレーム単位でIPRを分けて提出することもできた。したがって、IPR-3で主張した無効理由を、先に決定がなされた2つのIPRにおいて、Intuitiveが合理的に見て提起することができなかったとは結論づけることはできない。

複数のIPRについて:
・IPRを請求しても特許維持の判断がなされてしまうと、351条(e)(1)および(e)(2)の禁反言の規定により、先行文献に基づく無効を主張することができなくなる。そのため、IPRの請願人は、1回のIPRにおいて、できるだけ多くの証拠および理由を主張しようとする傾向にある。一方、IPRの請願書には14,000 wordsの字数制限が設けられているため、1つのIPRにおいて主張できる無効理由には限界がある。
 そこで、複数のIPRを同時に提出することも実務上行われているが、本判決はその場合でも、FWDの発行時期に差が生じたときには、後で審理されるIPRに禁反言がはたらくことを示す例である。
・判決が指摘するように、複数のIPRを同時に提出する場合には、併合の手続きや、クレームごとにIPRを分けて禁反言を避ける対応を慎重に検討する必要がある。

参考:
CAFC HP:Intuitive Surgical, Inc. v. Ethicon LLC判決文

(玄番 佐奈恵)

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