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【インド】補正に関するデリー高等裁判所の判決

IPニュース 2022.10.19
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特許付与前のPBPクレームからプロセスクレームへの補正認容の事例

判決:Nippon A&L Inc. v. The Controller of Patents C.A. (COMM.IPD-PAT)-11/2022 (July 5, 2022)

[経緯]
 Nippon A&L Inc.は、最初の審査報告(FER)でコントローラー(日本の審査官に相当)から「プロダクトバイプロセス(PBP)クレームはプロダクトクレームかプロセスクレームか不明確である」との記載不備の指摘を受け、記載不備解消のため、PBPクレームからプロセスクレームに補正しました。
 しかしコントローラーは、プロセスクレームは出願時のクレームの範囲外であるとして上記補正を認めませんでした。

(注釈)コントローラーの判断について
 インド特許法第59条(1)には、「明細書の補正は、補正後の明細書のクレームが補正前の明細書のクレームの範囲内に完全には含まれなくなるときは、一切許可されない」と規定されています。
 インドの特許審査では、この条文が極めて厳格に解釈され、クレームの補正は、出願時の「クレームの範囲内」で行わなければならず、例えば発明のカテゴリーを変更する補正などは難しいと考えられています。
 本件におけるコントローラーの判断も、上記従来の考え方を踏襲したものと思われます。

[判決の内容]
 上記コントローラーの判断に対する提訴において、裁判所は、インド特許法59条(1)について、特許付与前であれば、補正前後の発明は、それらの発明が開示される事項の範囲内に含まれる限り、同一である必要はないと解釈しました。
 また、裁判所は、プロダクトクレームはプロセスクレームと比較して広いと一般的に理解されること、よって、「プロダクトバイプロセス」クレームから「プロセス」クレームへの補正は範囲を狭める補正であると判断しました。さらに、上記補正は、クレームに係る拒絶理由解消のための補正であること等を考慮し、裁判所は、特許付与前の「プロダクトバイプロセス」クレームから「プロセス」への補正を認めるべきと判示しました。

[留意点]
 今回の判決では、上記のとおり、FERへの応答段階において、「プロダクトバイプロセス」クレームから「プロセス」クレームへカテゴリーを変更する補正が認められました。
 しかし、本判決の射程範囲が、FERで指摘を受けることなく自発的に、「プロダクトバイプロセス」クレームから「プロセス」クレームへ補正する場合や、FERへの応答段階において、拒絶理由解消のために「プロダクト」クレームから「プロセス」クレームへ補正する場合にまで及ぶのかなど、不明な点は多く、今後の実務や判決を注視していく必要があります。

[参考]
デリー高裁HP:Nippon A&L Inc. v. The Controller of Patents C.A. 判決文

(佐藤 渉)

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