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【米国】発明者としてAIを記載することを認めるべきとする申立(控訴)を退けたCAFCの判決の紹介

IPニュース 2022.11.29
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 発明者としてAI(人工知能)を記載することを認めるべきである、とする控訴人の申立を退けたCAFCの判決を簡単に紹介致します。

判決:Thaler v. Vidal, (Fed. Cir.) (2022/08/05)

1.結論
 CAFCは、「発明者」は自然人でなければならない、AIは発明者になり得ない、として、地裁が下した略式判決を支持した。

2.経緯と地裁の判断
 Stephen L. Thaler(出願人、原告、控訴人)は、人工知能(AI)プログラム「DABUS」を唯一の発明者とする特許出願を2件行った(米国特許出願第16/524,350号, 第16/524,532号)。
 USPTOにより、Thalerの出願は有効な発明者を欠いているため不完全であると判断された。当該判断に対するThalerのUSPTO長官への申立は、「機械は発明者としての資格を有しない」との理由で却下された。
 Thalerは、USPTOの却下決定を不服としてバージニア州地裁に提訴した。しかし、同地裁は、「発明者」は「個人
(individual)」でなければならず、「個人」は自然人でなければならないと結論付け、USPTOの申立を認めた。当該地裁の判決に対し、ThalerはCAFCに控訴した。

3.CAFCの判断
 CAFCは、地裁の判決を支持し、特許法は発明者が人間であることを明確に要求している、と判断した。CAFCは、発明者は「個人(individual)」であると特許法により規定されており、「個人」は 通常 自然人を意味すると理解される、と説明した(第100条(f)-(g)、第115条参照)。更に、CAFCは、特許法には、議会がこのデフォルトの意味から逸脱することを意図していたことを示すものはない、とした。
 Thalerは、自分の主張をサポートするために特許法の他の条文(特許法第101条の「whoever」の使用、第103条の「Patentability shall not be negated by the manner in which the invention was made.」、第271条の「whoever」の使用)に基づく主張もしたが、CAFCは、これらの条文は 誰が発明者になり得るかを明確に規定した条文に優先するものではないとして、Thalerの主張を認めなかった。
 また、CAFCは、南アフリカがDABUSを発明者として特許を付与したことにThalerが言及したことに対しても、外国の特許庁が米国特許法を解釈したのではない、その判断により我々の結論は変わらない、としている。

 CAFCは、判決文の最後で、「ある法令が、我々の前にある問題に明確に且つ直接的に答えている場合、我々の解析は、その平文(plain text)を超えない。ここで、議会は、自然人のみが発明者になり得ると決定しているので、AIは発明者になり得ない。従って、地裁の判決を支持する。」と結んでいる。

4.他国での出願経過等
 本願の出願人Stephen L. Thalerは、AIプログラムである「DABUS」を発明者として、日本を含む世界各国で同様の特許出願を行っているが、殆ど全ての国で「発明者は自然人でなければならない」との理由により書誌的事項にて出願を却下され続けている。上述の判決はその一つである。現時点では、南アフリカのみで「DABUS」出願に係る特許が発行されている。

5.参考資料
 CAFC HP:Thaler v. Vidal 判決文

(柏原 啓伸)

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