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【日本】知的財産高等裁判所の大合議事件の判決について

IPニュース 2022.12.12
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<事件の概要>
事件番号:令和2年(ネ)第10024号(判決言渡日:令和4年10月20日)
控訴人(一審原告):株式会社フジ医療器
被控訴人(一審被告):ファミリーイナダ株式会社
原審:大阪地方裁判所平成30年(ワ)第3226号
発明の名称:椅子式施療装置(特許番号:第4504690号)、椅子式マッサージ機(特許番号:第4866978号)
判決結果:原判決変更
主な争点:損害額(2項、3項)、構成要件充足性、特許の有効性(新規性、進歩性)

<事件に対するコメント>
 本大合議判決は、特許権侵害訴訟における損害額の算出方法に関します。
 特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には、特許権者がその侵害行為により損害を受けたものとして、特許法102条2項が適用されます(以前の大合議判決「平成30年(ネ)第10063号」)。本大合議判決において、特許権者が、侵害品と需要者を共通にする同種の製品であって、市場において、侵害者の侵害行為がなければ輸出又は販売することができたという競合関係にある製品を輸出又は販売していた場合には、当該侵害行為により特許権者の当該製品の売上げが減少したものと評価できるから、上記事情が存在するものとして、同項が適用される旨判示されました。
 また、本大合議判決は、以前の大合議判決「平成30年(ネ)第10063号」で示された特許法102条2項の算出方法の解釈(侵害品の限界利益の額×推定覆滅事由)のうち、推定覆滅部分について、特許権者が実施許諾をすることができたと認められるときは、同条3項が適用されるとの解釈を示しました。
 なお、本大合議判決の事案において、特許法102条2項の推定の覆滅事由のうち、特許発明が侵害品の部分のみに実施されていることを理由とする覆滅事由に係る推定覆滅部分については同条3項の適用を否定しましたが、市場の非同一性を理由とする覆滅事由に係る推定覆滅部分については同項の適用を認めました。

 本大合議判決の2つ前の大合議判決「平成30年(ネ)第10063号」(発明の名称:二酸化炭素含有粘性組成物)では特許法102条2項および3項についての解釈が示され、1つ前の大合議判決「平成31年(ネ)第10003号」(発明の名称:美容器)では同条1項についての解釈が示されました。したがって、本大合議判決と併せ、3件続けて損害額の算出方法について大合議判決が出されたことになります。

(参考)
 最高裁HP:
令和2年(ネ)第10024号判決要旨
令和2年(ネ)第10024号判決全文
平成31年(ネ)第10003号判決全文
平成30年(ネ)第10063号判決全文

(坂田 啓司)

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