News Menu

News & Topics

【ベトナム】知的財産権法改正(2023年1月1日施行)

IPニュース 2023.01.06
  • Twitter
  • facebook

 ベトナムで、特許、意匠、商標、著作権および育種権に関する知的財産権法の改正が行われます。当該改正は、音商標の保護及びデータ保護期間の規定以外は、2023年1月1日に施行されました(音商標の保護については2023年1月14日;データ保護期間については2024年1月14日に施行)。

 特許および意匠についての主な改正事項は、以下の通りです。

[特許]
・新規性審査への秘密先行技術文献の考慮
 秘密先行技術文献(Secret prior art)とは、審査される特許出願の出願日前または優先日前に提出され、当該特許出願の出願日または優先日以降に公開された他の出願である。

 上記において、Yは「審査される特許出願」、Xは「Yの出願日前または優先日前に提出され、出願Yの出願日後に公開される出願」、すなわち「秘密先行技術文献」である。
 現行法では、Yの新規性の審査の際に、Xは先行文献にならない。
 改正後は、Yの新規性の審査の際に、秘密先行技術文献としてXも考慮される(60条1項(b))。
  ※日本特許法での「拡大先願」に相当する。
 出願人同一の場合や発明者同一の場合の除外規定があるかは不明である。

・第一国出願要件の明確化
 改正により、
第89a条(外国で登録出願を提出する前の発明に係る安全保障に関する管理措置の実施)
 国防と安全保障に影響を及ぼす技術分野に係る発明であって、ベトナムでされ、かつ、特許を受ける権利がベトナム在住のベトナム人またはベトナム法に基づき設立された法人に属する場合、ベトナムで既に登録出願をしている場合に限り、外国に出願できる。』
が追加された。

 なお、現行では、規則で、
 (i)ベトナムで生じた発明は、ベトナムで第一国出願をしない限りベトナムでの保護を受けられないこと、
 (ii)ベトナム人またはベトナム企業に属する発明については、発明された場所を問わず、(i)と同様に取り扱われること、
 (iii)ベトナムで生じた外国人等に属する発明が秘密特許の対象であると認定された場合、外国特許出願が認められないこと、
 (iv)ベトナム人またはベトナム企業に属する発明が秘密特許の対象であると認定された場合、Ministry of Public Securityの許可を受けることにより、秘密特許制度を有する外国への特許出願が可能であること
と規定されている。

・拒絶理由、無効理由の追加
 改正により、以下の拒絶理由・無効理由が追加された(117条、96条)。
(a)補正が、出願で開示された内容を超えるものであるとき、又はクレームの主題の性質を実質的に変更するものであるとき
(b)クレームされた発明が当初明細書で開示された範囲を超えるとき
(c)発明が当業者によって実施できる程度に明細書で十分かつ明確に開示されていないとき
(d)遺伝資源又は遺伝資源に関連する伝統的知識に直接基づいてされた発明について、明細書に、その遺伝資源又は遺伝資源に関連する伝統的知識の由来を開示していないか、または正確に開示していないとき
(e)特許出願が第89a条に定める発明に係る安全保障に関する管理措置の実施に違反したとき
 ここで、(e)の「第89a条に定める発明に係る安全保障に関する管理措置の実施」は、上記の第一国出願要件に関する規定である。

・付与前異議申立と第三者意見
 現行法第112条には、いかなる第三者も、出願公開日から特許付与の決定の日まで第三者意見を提出可能という総則的な規定がある。実務上は第三者による監視と異議申立が混合したような制度であり、審査が長引く一因であった。第三者は出願の審査係属中いつでも意見を提出でき、ベトナム特許庁はその意見に対応しなければならなかったからである。
 改正後は、付与前異議申立が追加され(112a条)、第三者意見の取り扱いが変更される(112条)。

 付与前異議申立:何人も、出願の公開日から9か月以内に、特許出願に対して異議申立を提出できる。ベトナム知的財産局は異議申立への対応を義務付けられている(112a条3項)。
 異議申立の手続きにおいては、異議申立人は、ベトナム知的財産局に対して意見書を提出する機会を有する。

 第三者意見:何人も、出願の公開日から特許付与の決定の日までベトナム知的財産局に意見を提示する権利を有する。第三者意見は、工業所有権の登録出願の処理に関する参考資料とみなされる(112条)。

・データ保護期間
 CPTPP協定(第18.47条)の義務に従って、農業用化学製品について、上記秘密データを当局に提出したときから、承認された日から10年間が満了した日まで、当局は、上記秘密データの所有者の承諾を得ずに、秘密データを使用する旨の申請をした者に、許可をしてはならない、と規定された(128条4項)。
 また、承認された医薬品の安全、効果を証明するデータによって後続の申請人が承認申請できるようになった場合に、承認を行った当局は、当該医薬品の承認申請ができる日の5か月前から、当局の電子ポータルサイト又はホームページにおいて、後続の申請に関する情報を掲載しなければならない、と規定された(128条3項)。

[意匠]
・意匠の出願公開の遅延
 現行法では、意匠出願は、出願日から2か月以内に出願公開される(110条(3))。
 改正後は、意匠出願人は、出願時に、出願人の申し立てにより、意匠の公開を出願日から最大で7か月まで延期することができる(110条(3))。

(知財情報委員会)

Categories

Years

Tags