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【日本】コロンブスの卵と後知恵の論理

IPニュース 2007.11.17
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(2007 Annual Meeting)

概要

1. コロンブスが1492年にアメリカ大陸を発見したことは有名である。その功績を祝う晩餐会で、「西へ西へと航海して陸地に出会っただけではないか」との皮肉に対して、コロンブスは卵を取り上げ、「この卵を食卓の上に立ててみろ」と言った。だれも立てられないのを確認するとコロンブスは、卵のおしりを食卓でコツンとたたいてつぶし卵を立てた。そしてこう言った。「人がした後は何事も簡単だ。」 これがかの有名な「コロンブスの卵」の話である。特許発明は多かれ少なかれ「コロンブスの卵」的な要素を含んでいる。

2. 最近、特許出願の進歩性判断が益々厳しくなっているように思われる。しかしながら、進歩性の判断においては、事後的分析、すなわち「後知恵」の排除が不可欠である。この後知恵の問題を語る際には、「コロンブスの卵」の話が引き合いに出されることが多い。

3. 米国特許商標庁および欧州特許庁では、後知恵排除に関する規定を審査ガイドライン等に明記している。日本特許庁でも後知恵排除に関する規定が審査基準に明記されていたが、平成12年の改正によりこの規定が削除されたという経緯がある。

4. 様々な事例を分析すれば、進歩性の判断において「後知恵」が入り込む典型的なパターンが明らかになる。具体的には、技術分野や課題の上位概念化、構成の一部抽出・上位概念化、効果の参酌におけるベースの考え方などにおいて、後知恵が入り込む可能性がある。拒絶理由の応答に際して、このような後知恵のパターンを意識することが、後知恵の排除に少しなりとも役に立つのではと思う。

5, 最近、ようやく、進歩性の判断が後知恵であることを明確に指摘する複数の判決が出された。

6. このような進歩性判断における「後知恵」に関して、簡単に紹介する。

参考文献

・高島喜一「進歩性判断における論理づけ」特許研究No.40, 2005
・渡部 温「最近の審決取消訴訟における進歩性判断の傾向(機械分野)」パテント
・橿本英吾「進歩性判断における上位概念化の上限」特技懇 No.245, 2007
・平成14年(行ケ)第197号、・平成18年(行ケ)第10422号、平成18年(行ケ)第10211号、など

プレゼンテーション資料はこちらから

岡部 博史

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