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【米国】実施可能要件が争点となった最高裁判決の紹介

IPニュース 2023.09.20
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 機能的表現によって特定された抗体のクレームについて実施可能要件が争点となった最高裁判決をご紹介します。

判決:Amgen Inc. v. Sanofi No. 21-757 (Supreme Court, May 18, 2023)

判決概要:
 最高裁判所は、Amgen社の特許は実施可能要件を満たしていないとしたCAFCの判決を支持した。

経緯:
・争点となったAmgen社の特許クレームは、(1)PCSK9タンパク質上の特定のアミノ酸残基に結合し、(2)PCSK9タンパク質がLDL受容体に結合することを阻害する抗体に関するものであった。特許クレームでは、抗体の配列や構造等は特定されておらず、機能的表現のみによって抗体が特定されていた。
・明細書中には、特許クレームに包含される26種類の抗体のアミノ酸配列が開示されており、特許クレームに包含される他の抗体を作製するための2つの方法(「ロードマップ」および「保存的置換」)が記載されていた。
・「ロードマップ」として、具体的に以下の方法が記載されていた:(1)種々の抗体を作製する; (2)抗体がPCSK9に結合するか否かをテストする; (3)PCSK9に結合する抗体がクレームに規定されている領域に結合するか否かをテストする; および(4)クレームに規定されている領域に結合する抗体が、PCSK9タンパク質がLDL受容体に結合することを阻害するか否かをテストすること。
・「保存的置換」として、具体的に以下の方法が記載されていた:(1)記載されている機能を発揮することが知られている抗体から開始する; (2)抗体中の選択されたアミノ酸を類似の性質を有することが知られている他のアミノ酸に置換する; および(3)得られた抗体が記載されている機能を発揮するか否かをテストすること。
・Amgen社は、明細書中に開示されている26種類の抗体のアミノ酸配列と、上記の2つの方法を組み合わせることにより、特許クレームに包含される抗体を製造できると主張した。

最高裁判所の判断:
・最高裁判所は、過去の判決を引用して、明細書はクレームに記載された発明の全範囲を当業者が実施できるように記載されなければならないと述べ、「より多くをクレームする場合、より多くを実施可能にしなければならない(the more one claims, the more one must enable)」と述べた。一方で、最高裁判所は、クレームされた発明のあらゆる実施形態の詳細な製造方法及び使用方法の記載が常に必要とされるわけではないとし、クレームされた発明を製造及び使用するための合理的な量の実験を当業者に要求することは可能であり、合理的であるか否かは発明の性質及び技術分野によるとした。
・最高裁判所は、本件について、Amgen社の特許クレームは明細書中に開示された26種類の抗体よりもはるかに多くの抗体を包含しており、合理的な程度の実験を考慮してもクレームされた抗体の全範囲を実施できないと判断した。また、Amgen社が主張した他の抗体を作製するための2つの方法(「ロードマップ」および「保存的置換」)は、単に試行錯誤の必要な2つの研究課題を開示しているに過ぎないと判断した。

実務上の留意点:
・機能的表現のみによって特定されたクレームでは、配列や構造等を特定した場合よりも広い範囲の権利化が可能となり得る。しかしながら、特に抗体に関する出願の場合、機能的表現のみによって特定されたクレームは本判決のように実施可能要件違反が問題となり得る。機能的表現により特定されたクレームの権利化を目指す場合、明細書中にできるだけ多くの抗体等の具体例(実施例)を記載しておくことが望ましいと考えられる。他方、実施可能要件違反に対する反論が難しい場合は、次善の策として、配列や構造等を特定したクレームや明細書の記載を設けておくことなどが必要となると考えられる。

(参考)
米国最高裁HP:Amgen Inc. v. Sanofi  最高裁判決文

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