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【インド】分割に関するデリー高等裁判所の判決

お知らせ 2023.12.19
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親出願の明細書のみに記載の発明(親出願のクレームに記載されていない発明)からの分割出願のクレームが分割要件を満たすべきとされた事例

判決:Syngenta Limited v. Controller of Patents and Designs, C.A.(COMM.IPD-PAT) 471/202(2023年10月13日デリー高裁合議審)

[経緯]
 出願人であるSyngenta Limitedは、親出願の明細書のみに記載され、親出願のクレームには記載されていない発明について自発的に分割出願を行いました。コントローラー(日本の審査官に相当)は、分割クレームが親出願のクレームに記載されていないことを唯一の理由として、当該分割出願を拒絶しました。

(コントローラーの判断について)
 分割出願に関するインド特許法第16条(1)には、「特許出願を行った者は、特許付与前にいつでも、その者が望む限り又は完全明細書のクレームが2以上の発明に係るものであるとの理由により長官が提起した拒絶理由を除くために、最初に述べた出願について既に提出済みの仮明細書又は完全明細書に開示された発明について、新たな出願をすることができる」と規定されており、インド特許法では、明細書(仮明細書又は完全明細書)に基づく分割出願は認められるように読めますが、インド特許庁の実務では、親出願のクレームに記載された発明でないと分割出願が認められず、裁判所もそのような運用を支持していました。
 本件におけるコントローラーの判断も、上記従来の考え方を踏襲したものと思われます。

 これに対して、デリー高等裁判所は、Single bench(単独審)において、分割クレームが親出願のクレームに記載されていなければならないとの分割要件に関する判断基準は、自発的な分割出願に適用されないとの意見を述べ、この問題をより大きな法廷(larger bench)へ委ね、裁判長は、Division bench(合議審)を構成してこの問題に対処すると判示していました(2023年7月26日判決)。

[判決の内容]
 前記Division bench(合議審)は、「分割出願を行うためには、親出願に複数の発明が記載されていることが必要であるが、この複数の発明は、自発的か、または拒絶理由に対するものであるかに関わらず、明細書(仮明細書又は完全明細書)から確認することができればよく、クレームに法的に制限される必要はない」と判示しました(2023年10月13日判決)。

[実務上の留意点]
 この判決により、分割出願のクレームは、親出願の明細書にのみ記載の発明に基づいて行うことが可能になることが期待されますが、この判決が今後の審査にどの程度影響を及ぼすのかは現状不明であり、実務上、分割出願の審査を行うコントローラーが前記分割要件をどう判断するか注視する必要があります。

(佐藤 渉)

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