2024年3月15日に2024年改正特許規則が施行されました。
主要な改正点は、以下の通りです。
1.審査請求期限の短縮(規則24B(1))
出願の審査請求期限が、「従来:48ヶ月」→「改正後:31ヶ月」(優先日もしくは出願日の何れか先の日から31ヶ月)に短縮された。
適用対象は、2024年3月15日以降に提出された出願であり、PCT出願の場合、2024年3月15日以降にインドに移行した件である。
2.実施報告義務の軽減(規則131(2)、Form27)
・実施報告書の提出頻度が、「1会計年度ごと」から「3会計年度ごと」へ変更となった。
例えば2023年4月1日~2024年3月31日に特許付与された件は、3会計年度の期間が2024年4月1日~2027年3月31日であり、初回の実施報告書の提出期限は2027年9月30日となる。
・また、報告フォーム(Form27)が従来よりも簡素化された。その結果、特許権者の負担が軽減されることとなった。
3.特許法第8条(1)(2)の対応外国出願の情報開示義務(規則12(2)、12(3)、12(4))
(a) 第8条(1)のForm3(対応外国出願審査状況報告書、ステータス)の提出時期は、規則12において、以下の通りとなった。
(i) 出願時、または出願日から6ヶ月以内(規則12(1A)、改正無し)
(ii) 出願時(移行時)に入手できなかった追加の関連外国出願の詳細は、最初の審査報告(First Examination Report (FER))発行日から3ヶ月以内(規則12(2))。
(従来:当該関連外国出願の出願日から6ヶ月以内に提出必要であった)
→FER発行まで、追加の関連外国出願の詳細につきForm3提出の必要がなくなった。
(b) 第8条(2)の対応外国出願審査書類(拒絶理由通知書、特許査定、拒絶査定、許可クレームなど)の提出は、従来、義務付けられていた。
しかし規則12(3)で、この提出義務に代えて、コントローラーは、公開されているかアクセス可能なデータベースから、この様な情報や書類を取得する、に改められた。
ただしコントローラーは、第8条(1)のForm3、第8条(2)の対応外国出願審査書類(第8条(2)の対応外国出願審査書類のみ、との情報もある)を、出願人に対して請求でき、その場合、出願人は請求から2ヶ月以内に提出する必要がある(規則12(4)新設)。
4.グレースピリオドの手続きの明確化(規則29A新設、Form31)
特許法31条のグレースピリオドを申請するための新たな様式(Form31)が定められた。
5.分割出願(規則13(2A)新設)
分割出願は、従来、親出願のクレーム記載事項からのみ可能であったが、本改正で、仮明細書、完全明細書、又はすでに出願された分割出願に開示された発明からも可能となった。
6.期間延長が可能な対象手続の拡大(規則138)
規則138は手続の期間延長を定めた規則である。この規則において、改正前は、
・国内段階移行期間、
・第19条補正の翻訳文、第34条補正の翻訳文の提出、
・優先権書類の翻訳文提出、
・審査請求書類の提出、
・FERへの応答期間、
・年金納付
などの手続は除外されていた。しかし本改正により、この除外規定がなくなり、上記手続も、延長手数料を払うことで最長6か月の延長が可能となった。
ただし、例えば、FERの応答期間のように、改正された規則138と現行の規則24Cの間で、延長期間について明確な矛盾がある点、懸念されている。また、一部の現地代理人によれば、規則138のもとでは審査請求の期限は延長できない、との情報もある。よって、手続の延長に際しては、必要に応じて現地代理人への確認が必要であると思われる。
延長手数料は、大企業の場合で、1ヶ月延長毎に50,000インドルピー(1インドルピー=約1.85円の換算で約9~10万円)と高額設定されることとなった。
7.維持年金の割引(規則80(3)新設)
4年分以上の維持年金をe-filingにより前納する場合、納付金額の10%が減額されることとなった。
8.付与前異議申立(規則55(3)、55(4))
・コントローラーが付与前異議申立を維持すべきでないと判断した場合、付与前異議申立を却下できることとなった。軽率な付与前異議申立の抑制が期待される。
・出願人の応答期間が短縮された。手続きの迅速化が期待される。
※今回の規則改正は、改正条文中に問題点・不明点が幾つか存在しており、現地代理人の情報にも齟齬がある状況です。具体的事案については、必要に応じて現地代理人にご確認下さい。
(参考)
インド特許庁 HP:Patent Amendment Rule (2024)
(山田 純子)