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【EPO】EPCの規則改正「調査への応答及び補正に関する制限」

IPニュース 2009.11.14
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稲葉 和久

はじめに

欧州特許条約(EPC)では、2010年4月1日に改正規則が適用される。改正規則は大きく分けて分割出願に関するものと、調査・補正に関するものがあり、ここでは後者の調査・補正に関する改正内容について説明する。

1.複数の独立クレームを含む出願(規則62a)

1カテゴリーに複数の独立クレームを含む場合、サーチ段階においても規則43(2)に違反している場合、出願人は、どのクレームをサーチすべきか2ヶ月以内に指定するよう求められる。出願人が期間内にサーチすべきクレームを示さなかった場合、各カテゴリーの最初のクレームについてサーチが行われる(規則62a(1))。出願人はサーチされた主題にクレームを限定することを求められる(規則62a(2))

2.不完全なサーチ(規則63)

EPOにおいて出願が有意義なサーチを行うことができないと判断された場合、出願人は、サーチすべき主題を示す意見を2ヶ月以内に提出するよう求められる(規則63(1))。上記期間内に出願人から意見が提出されないか、なお有意義なサーチを行うには不十分と判断された場合、サーチ不可能の宣言又は部分サーチレポートが作成される(規則62(2))。なお、規則63によるオブジェクションは審査段階で再検討される。

3.発明が単一性を欠く場合の追加料金支払い期限(規則64(1))

発明が単一性を欠く場合の追加料金支払い期限が従来の6週間から2ヶ月となった(規則64(1))。

4.拡張サーチレポート(EESR)に対する応答(規則70a)

拡張サーチレポートへの応答が義務となり、応答しない場合には出願が取り下げられたものとみなされる(規則70a(1))。従来は、拡張サーチレポートへの応答は義務ではなく、応答しない場合には、その後の審査段階でEESRと同じ内容の拒絶理由を受け取ることとなっていた。新たに設けられた規則70a(1)により、出願人は審査請求期間内(拡張サーチレポート発行から6月以内)に拡張サーチレポートに対して意見を述べ、必要な場合には瑕疵を訂正し、明細書、クレームおよび図面を補正する必要がある。
なお、拡張サーチレポートへの応答義務については、全ての場合ではなく、拡張サーチレポートの見解がネガティブな場合に限られる(Notice from the European Patent Office dated 15 October 2009 concerning amendments to the Implementing Regulations to the European Patent Convention (EPC)参照:EPOホームページ)。見解が肯定的な場合には応答は不要である。しかし、この場合にも補正を行うための期限は上記と同様の制限が適用される。
また、拡張サーチレポートが送達される前に審査請求を行っている場合、および、Euro-PCTで補充サーチレポートが作成された場合には、出願人は、手続継続の意思を確認する期間内に拡張サーチレポート(補充サーチレポート)に対して応答しなければならない(規則70a(2))。
出願人が上記のサーチレポートに対する応答を怠った場合、出願は取り下げられたものとみなされる(規則70a(3))。

5.Euro-PCTの国際調査報告又は予備審査報告への応答及び自発補正(規則161)

(1)EPOが国際調査(又は予備審査)を行ったEuro-PCTの場合
EPOが国際調査(又は予備審査)を行った場合、EPOに移行後に規則161(1)に基づいて発行される通知から1月以内に国際調査見解書又は予備審査報告に対して意見を述べ、必要な場合には瑕疵を訂正し、明細書、クレーム及び図面を補正する必要がある。上記期間内に応答を行わなかった場合には出願は取り下げられたものとみなされる(規則161(1))。なお、上記期間が自発補正できる唯一の期間となる。
(2)EPOが補充サーチレポートを作成する(EPO以外が国際調査(又は国際予備審査)を行ったEuro-PCT)の場合
EPOが補充サーチレポートを作成する(EPO以外が国際調査(又は国際予備審査)を行ったEuro-PCT)の場合には、EPOに移行後に規則161(2)に基づいて発行される通知から1月以内に自発補正を1回行うことができる。補正後の内容に基づいて補充サーチレポートが作成される(規則161(2))。

6.欧州特許出願の補正(規則137)

出願人が自己の意思で補正できる時期が、拡張調査報告(EESR)受領後の応答時(規則70a(1)及び(2))、EPOが国際調査機関である場合のEuro-PCTのEPO移行後に受けるEPOからのコミュニケーション応答時(規則161(1))、に限られる(規則137(2))。
上記以降は審査部の同意なく欧州特許出願を補正できない(規則137(3))。
出願人は、規則137(1)~(3)の補正を行う場合、その補正内容を特定すると共に、補正の根拠を示す必要がある。出願人が上記要求を満たしていない場合、1月以内に瑕疵を訂正するよう求められる(規則137(4))。出願人が上記期間内に応答しない場合には、条約94条(4)により取り下げたものとみなされる。
補正後のクレームは、当初クレームされていた発明又は単一の発明概念を形成する一群の発明と関連していない未サーチの主題に関するものであってはならない。また、補正後のクレームは規則62a又は規則63によりサーチされていない主題に関するものであってはならない(規則137(5))。

7.改正規則の適用時期

(1)新規則62a、改正規則63、新規則70a、改正規則137、改正規則161は、2010年4月1日に施行される。
(2)新規則62a、改正規則63、新規則70a、改正規則137は、2010年4月1日以降にサーチレポート(補充サーチレポート)が発行される出願について適用される。
(3)改正規則161は、2010年4月1日までに規則161に基づく通知が未発行の全てのEuro-PCTに適用される。

8.改正ガイドラインの公表

改正されたガイドラインのドラフトは、2009年12月に公表され、EPOウェブ上で利用可能となる予定である。

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