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【日本】特許期間延長登録出願における「処分の対象となった物」とは、「医薬品」か「有効成分」か?

IPニュース 2011.06.02
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要約:
本件最高裁判決は、特許期間延長制度が採用された昭和63年1月1日以来約24年もの永きに亘って維持されてきた特許庁の審査基準を覆す全く新しい考え方を示す判決である。現審査基準によれば、特許期間延長登録出願における「処分の対象となった物」としては、厚労省による製造販売承認を受けた医薬品における「有効成分」であり、その用途としては、承認を受けた「効能・効果」とされ、承認の対象となった「医薬品」を「処分の対象となった物」として記載することを認めず、またその承認も、同じ「有効成分」および「効能・効果」に関して最初の承認についてのみ、特許期間延長の対象として受け入れているところ、本件判決では、かかる特許庁の審査基準を全く否定している。
該最高裁判決によれば、その特許権の存続期間の延長登録出願の理由となった医薬品の製造販売承認(後行処分)に先行して、同じ「有効成分」および「効能・効果」を有する医薬品(先行医薬品)について、すでに同製造販売承認(先行処分)がされている場合であっても、該先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないときは、先行処分がなされていることを根拠に、当該特許権の特許発明の実施に後行処分を受ける必要性がなかったとは言えないとして、それを否定する審決が違法であるとした原審の知財高裁の判断が正当であるとしている。
該最高裁判決では、「処分の対象となった物」として、承認を受けた「医薬品」かあるいは「有効成分」かの点に関しては特に言及していないが、原審の知財高裁の判決では、「その「物」を「有効成分」であるとした審決の判断には、誤りがある。」としている。

I. まえがき
特許庁が、特許期間延長制度の導入以来維持してきた審査基準によれは、特許期間延長登録出願における「処分の対象となった物」としては、厚労省による製造販売承認を受けた医薬品における「有効成分」であり、その用途としては、承認を受けた「効能・効果」とされており、「処分の対象となった物」として、承認を受けた「医薬品」自体を記載することを認めていない。またその延長登録出願の根拠となる「政令で定める処分」(薬事法第14条第1項による医薬品の製造販売の承認)も、同じ「有効成分」および「効能・効果」を有する医薬品に関して最初の承認でなければならないとされている。したがって、製剤形の変更や用量の変更をした場合に、薬事法のもとで要求されている新たな承認を受けた場合であっても、その医薬品が先行の承認における医薬品と同じ「有効成分」および「効能・効果」を有する限り、該後の承認に基づいた特許期間の延長登録を認めていない。特許庁は、厚労省における薬事法第14条での取り扱いと特許法での取り扱いとは異なるとしている。
それに対して、平成23年4月28日付け最高裁判決(平成21(行ヒ)326)およびその原審の知財高裁判決(平成20(行ケ)10460;平成21年5月29日判決)により、かかる特許庁の審査基準が全く否定され、「処分の対象となった物」としては、承認を受けた「医薬品」が正しく、審査基準で指導している「有効成分」は正しくないとし、また先行の承認における医薬品と同じ「有効成分」および「効能・効果」を有する医薬品に関する2度目の承認であっても、該先行承認の医薬品が、2度目の承認に基づく特許期間延長登録出願に係る特許権の技術的範囲に属さない限り、該延長登録出願は正当に受け入れられるとされている。したがって、該最高裁の判決により、特許庁はその審査基準を変更せざるを得ないと考えられ、現に、平成23年5月16日付けの特許庁の審査基準室の通知によれば、本年秋頃までに改訂審査基準を公表する予定であるとされており、その審査基準がどのように変更されるか注目しておく必要がある。

II. 知財高裁判決、平成20(行ケ)10460(平成21年5月29日判決)
原告:武田薬品工業株式会社
被告:特許庁長官
主文:1.特許庁が不服2002-20937号事件について平成20年10
月21日にした審決を取り消す。
2.訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
(1)争いのない事実等
原告は、特許第3,134,187号(発明の名称:「放出制御組成物」;登録日:平成12年12月1日;出願日:平成9年3月6日;優先日:平成8年3月7日)の特許権者であり、平成17年12月16日に、本件の特許権につき特許期間延長登録出願を行った。その延長登録出願は、薬事法第14条第1項に規定する医薬品の製造販売の承認に基づいて行い、その際、「処分の対象となった物」として下記:
(ア)処分の対象となった医薬品(販売名)
パシーフカプセル30mg
(イ)処分の対象となった医薬品の有効成分(一般名称)
塩酸モルヒネ
の表示をし、またその用途に関しては、下記:
「処分の対象となった物について特定された用途(効能・効果)
中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛
と記載していた。
その特許期間延長登録出願に対して拒絶査定がなされ、その理由は、「処分の対象となった物」として承認を受けた「医薬品」名で表示されているが、その医薬品の「有効成分」とすべきであり、さらに、該承認された医薬品と同一の「有効成分」および「効能・効果」を有する医薬品について、すでに製造販売の承認がなされているのであるから、かかる2度目の承認に基づいて延長は認められないとされている。それに対して、特許権者は拒絶査定不服の審判を請求したが、同様の理由にて、拒絶査定の理由が支持され、「本件発明の実施に特許法67条第2項の政令で定める処分(以下、「政令で定める処分」という)を受けることが必要であったとは認められないから、本件出願は同法67条の3第1項第1号の規定により拒絶すべきもの」とする、審決がなされた。
該審決に対して、特許権者(武田薬品)は、知財高裁に審決取消訴訟を提起した。
(2)原告(特許権者)の主張
原告は、審決の拒絶理由には下記の誤りがあると指摘した。
(i)特許法68条の2にいう「政令で定める処分の対象となった物」につい
ての解釈の誤り
特許権の存続期間延長登録の理由となる「政令で定める処分」が薬事法14条1項所定の厚生労働大臣の承認である場合、同承認は、「医薬品」を対象とするものであって、「有効成分」を対象とするものではない。特許法68条の2にいう「政令で定める処分の対象となった物」が、品目によって特定された薬事法上の「医薬品」を指すことは明らかであって、これを「有効成分」と解する根拠はないというべきである。
(ii) 特許法67条の3第1項第1号の解釈・適用の誤り
該審決には、「塩酸モルヒネを有効成分(物)とし、同一の効能・効果(用途)を有する医薬品については本件の処分以前にすでに承認を受けていたのであるから、当該医薬品の有効成分、効能・効果以外の剤形などの変更の必要上、新たに処分を受ける必要が生じたとしても、本件処分は特許発明の実施に第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であったものとすることはできない。」とされている。
しかしながら、特許権の特許期間延長登録制度は、特許発明の実施について、「政令で定める処分」を受けることが必要であるために、その特許発明の実施をすることができない期間があったときに、その実施できなかった期間の回復を図る目的で、当該期間に相当する期間について、5年を限度として、特許権の存続期間の延長を認める制度であるところ、本件においては、該承認を得るまで本件発明を実施することができなかったのである。
また、本件先行処分の対象となった先行医薬品は、本件発明1ないし22のいずれの技術的範囲にも含まれず、一方、本件処分の対象となった本件医薬品は、本件発明11~14及び16~22のいずれの技術的範囲にも含まれる。したがって、本件発明の実施には「政令で定める処分」を受けることが必要であった。
先行医薬品と本件承認における医薬品とが、「有効成分」と「効能・効果」において共通することをもって、本件発明の実施に、「政令で定める処分」を受けることが必要であったとは認められないとした審決の判断は、特許法67条の3第1項第1号の解釈・適用を誤ったものというべきである。
(iii)特許法67条の3第1項第1号の文言の解釈に当たり、同法68条の2の規定を参酌した誤り
特許出願の審査において、特許権の効力に関する特許法68条の規定が参酌されることはなく、それは、特許権存続期間延長登録出願の審査においても同様であって、延長登録の前の手続きである延長登録出願の審査に、延長登録後の特許権の効力が影響することは、同法の想定するところではない。
(3)被告(特許庁長官)の反論
原告の主張(i)に関して被告は下記の反論を行った。
医薬品の製造販売の承認は、薬事法のもとで、医薬品の有効性、安全性の確保を目的に行われるところ、かかる「薬事法における有効性、安全性の確保という目的に照らすならば、医薬品の本質は、「有効成分」、「効能・効果」であるから、薬事法の規制の対象も、「有効成分」、「効能・効果」であると解すべきである。」
原告の主張(ii)に関する反論としては、政令で定める処分は、所定の用途について使用される物について製造販売禁止を解除する必要があった処分ということができ、「このような処分(医薬品にあっては特定の「有効成分」と「効能・効果」についての最初の処分こそが、特許法67条2項の「安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分であって、当該処分の目的、手続き等からみて当該処分を的確に行うには相当の期間を要するものとして政令で定めるもの」といえるのである。」とし、さらに、「しかるところ、本件においては、本件処分と同一の「有効成分」、「効能・効果」について、既に本件先行処分がされているのであるから、本件処分が本件発明の実施に必要であったということはできない。」としている。
さらに、原告主張の(iii)に関しては、「特許法67条の3第1項1号の文言の解釈に当たり、同胞68条の2を参酌すべきでないとする合法的な理由はない。特許法67条の3第1項1号にいう「第67条第2項の政令で定める処分」が何を意味するかを的確に理解するためには、同法68条の2の物、用途の意味を考慮することが必要だからである。」としている。
(4)裁判所の判断
審決の判断には、以下の2点(「特許法67条の3第1項1号該当性の誤り」及び「先行処分に係る延長登録の効力の及ぶ範囲についての誤り」)において誤りがあり、その誤りは、いずれも審決の結論に影響するものであるから、審決と取り消すべきものと判断する。その理由は、以下の通り。
(i) 特許法67条の3第1項1号該当性の誤り
特許権の存続期間の延長制度は、特許発明を実施する意志及び能力があってもなお、特許発明を実施することができなかった特許権者に対して、「政令で定める処分」を受けることによって禁止が解除されることとなった特許発明の実施行為について、当該「政令で定める処分」を受けるために必要であった期間、
特許権の存続期間を延長するという方法を講じることによって、特許発明を実施できなかった不利益の解消を図った制度であると云うことができる。しかるに、本件においては、本件処分の前に、先行医薬品を対象とする先行処分がなされているが、該先行医薬品は、本件発明の技術的範囲に含まれず、またその先行処分を受けた者が、本件特許権者である原告でもなく、またその専用実施権者でも登録した通常実施権者でもなく、先行処分によって禁止が解除された先行医薬品の製造行為等は本件発明の実施行為に該当するものではないから、
該先行処分が存在しても、該先行処分を受けることによって禁止が解除された行為が、本件発明の技術的範囲に属し、本件発明の実施行為に該当するという関係が存在するわけではない。
したがって、審決において、「医薬品における『物』と『用途』の解釈」の項における説示の当否にかかわらず、本件先行処分の存在を理由として、本件発明の実施に政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないから、本件出願は特許法67条の3第1項1号により拒絶すべきであると判断した点には誤りがある。
(ii) 先行処分に係る延長登録の効力の及ぶ範囲についての誤り
特許法68条の2の規定は、存続期間が延長された特許権の効力の及ぶ範囲を特許発明のすべての範囲とはせず、「政令で定める処分の対象」となった「物」(または「物」及び「用途」)に限定した規定であり、同規定について、存続期間が延長された特許権の効力の及ぶ範囲である「政令で定める処分の対象」となった「物」(または「物」及び『用途」)を、「有効成分」(ないし「効能・効果」)のみで画された範囲に拡大して解釈する文理解釈上の根拠はなく、また立法の経緯や立法趣旨等もみても、そのような解釈を行う合理性はない。
したがって、特許法68条の2にいう「政令で定める処分の対象」となった「物」を「有効成分」とする審決の判断は、採用することができないものというべきであり、該審決の判断には、誤りがある。

III. 最高裁判決、平成21(行ヒ)326〔平成23年4月28日、第一小法廷判決)

(原審:知財高裁判決平成20(行ケ)10460)
上告人: 特許庁長官
被上告人:武田薬品工業株式会社
主文:本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。
理由:
事実関係は省略(上記知財高裁の判決の項を参照)
「特許権の存続期間の延長登録出願の理由となった薬事法14条1項による製造販売の承認(「後行処分」)に先行して、後行処分の対象となった医薬品(「後行医薬品」)と有効成分及び効能・効果を同じくする医薬品(「先行医薬品」)について同製造販売の承認(「先行処分」)がされている場合であっても、先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないときは、先行処分がされていることを根拠として、当該特許権の特許発明の実施に後行処分を受けることが必要であったとは認められないということはできない。」
なぜなら、「特許権の存続期間の延長制度は、特許法67条第2項の政令で定める処分を受けるために特許発明を実施できなかった期間を回復することを目的とするところ、後行医薬品と有効成分並びに効能及び効果を同じくする先行医薬品について先行処分がされていたからといって、先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しない以上、上記延長登録出願に係る特許権のうち後行医薬品がその実施に当たる特許発明はもとより、上記特許権のいずれの請求項に係る特許発明も実施することができたとはいえないからである。」そして、「先行医薬品が、延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないときは、先行処分により存続期間が延長され得た場合の特許権の効力の及ぶ範囲(特許法68条の2)をどのように解するかによって上記結論が左右されるものではない。」とされ、その結論として、
「本件先行処分がされていることは、本件特許権の特許発明の実施に当たり、薬事法14条1項による製造販売の承認を受けることが必要であったことを否定する理由にならないとして、本件審決を違法であるとした原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は採用することができない。」
とされている。

IV. 考察
特許庁の現行の審査基準によれば、特許権の存続期間延長登録出願の対象となる物(政令で定めた処分の対象となた物)は、厚労省の製造販売の承認をえた医薬品の「有効成分」および「用途(効能・効果)」に限られ、該承認を受けた「医薬品」自体を表記とることは認めておらず、しかも、同じ「有効成分」および「用途(効能・効果)」を有する医薬品について既に承認が与えられている場合には、さらに延長登録を受けることはできない。
しかるに、今回の知財高裁の判決およびその結論を支持した最高裁の判決では、かかる特許庁の審査基準をまったく否定したものとなっている。
特許庁は、該最高裁の判決をうけて、現行の審査基準の改訂を検討し、改訂審査基準を本年(平成23年)秋頃までに公表する予定であり、現在審査中の延長登録出願の審査の着手を改訂審査基準の公表まで止める旨、平成23年5月16日付けで公表している。
今回の判決において、もっとも重要な点は、特許権の存続期間の延長登録出願の対象となる物(「政令で定める処分の対象」となった「物」)を「有効成分」であって、承認を受けた医薬品自体ではないとした審決が違法であるとしたことである。
しかし最高裁の判決では、原審の知財高裁の判決を支持した理由として、同じ「有効成分」及び「用途(効能・効果)」を有する医薬品について先行する承認があるからとの理由で、本件特許権の特許発明の実施のために、薬事法14条1項による製造販売の承認を受けることが必要であったことを否定する理由にならないとし、先の承認における医薬品が、本件特許発明の技術的範囲に属しない以上は、後の承認に基づく特許期間延長登録を否定する理由はないとして、それに反する審決は違法であるとするのみであって、特許権の存続期間延長登録出願の対象となる物(政令で定めた処分の対象となった物)として、「有効成分」か「医薬品」自体とすべきかについては、全く触れていない。しかしながら、原審の知財高裁の判決では、「特許法68条の2にいう「政令で定める処分の対象」となった「物」を「有効成分」とする審決の判断は、採用することができない」と明瞭に指摘している。してみれば、原審の知財高裁の判決を支持いている以上、最高裁においても、特許期間延長の対象となる物は認証をうけた医薬品自体であって「有効成分」ではないとする知財高裁の判断を支持しているものと解される。ただ、最高裁の判決の末尾に「論旨は採用できない。」との文言があり、この文言が何を意味するものか全く不明であるが、仮に、「政令で定める処分の対象」となった「物」を「有効成分」でなく「医薬品」であるとする点は採用しないとすると、先行医薬品が、本件特許発明の技術的範囲に属しないとの条件に矛盾が生じる(「有効成分」とすれば、後の特許発明の技術的範囲に属しないとすることは難しい)。
最高裁の判決には、今一つ疑問がある。すなはち、該判決では、原審の知財高裁の判決を支持した理由として、「同じ「有効成分」及び「用途(効能・効果)」を有する医薬品について先行する承認があるからとの理由で、本件特許権の特許発明の実施のために、薬事法14条1項による製造販売の承認を受けることが必要であったことを否定する理由にならない」としているが、薬事法のもとでは、わずかな処方の変更でも製造販売承認を得なければ実施できないのであって、特許期間延長制度が、実施できなかった期間の回復を目的とするから、承認を得なければ実施できなかった期間がある以上、常にそれを回復する目的で特許期間の延長を認めるべきとすると、問題が残るようにも思われる。
いずれにしても、特許庁の予定している審査基準の改訂がどのように行われるか、注目する必要がある。特許期間延長登録の認められる「政令で定める処分の対象」となった「物」を、上記判決を受けて、「有効成分」でなく「医薬品」であるとするならば、延長登録された特許権の効力の及ぶ範囲(特許法第68条の2)に大きく影響すると考えられる。「医薬品」自体を対象として延長登録された場合、延長された特許権の効力はその承認を受けた「医薬品」自体(処方自体)となるものと考えられる(均等論の適用の点は別として)。特許法第68条の2の解釈として、「医薬品」自体を対象とした場合であっても、その効力は同じ有効成分のものに及ぶとの解釈があり得るとの考えもあると聞くが、にわかに受け入れ難い。延長登録出願の際は、「有効成分」と表示することは違法であるとし、その効力の判断に際しては、「医薬品」自体ではなく、その「有効成分」とすべしと解することには、いささか無理があるように思える。
延長登録の対象となる「物」として、常に、「医薬品」自体とすべきで、「有効成分」とすべきでないとされるならば、ジェネリック製品に対しては十分有効であるが、少し処方をかえた製品に対しては有効でなくなる虞がある。本件判決における特許発明のような、特殊な製剤(持続製剤)の場合には元々その権利の及ぶ範囲は限られており、その延長登録出願の対象が承認を受けた「医薬品」自体とされ、その延長された特許権の効力もその「医薬品」自体にのみ及ぶと解されても、あまり大きな問題とはならないと考えられるが、化合物特許に基づく特許期間延長登録出願において、その延長登録出願の対象が「医薬品」自体に限られ、「有効成分」では認められなくなれば、同じ「有効成分」で同じ「用途(効能・効果)」であっても、製剤を少し変更することにより、延長された特許権の効力は及ばなくなる可能性があり、特許期間延長の効果は著しく制限される虞がある。
したがって、特許庁の予定している審査基準の改訂が如何に行われるか極めて重要である。知財高裁における議論に基づき、薬事法の規定にしたがって、いずれの場合にも、対象となる「物」を、常に、「有効成分」でなく「医薬品」とすべきとされるのか、延長登録出願の対象となる特許の種類によって、「有効成分」か、「医薬品」か、のいずれか選択の余地があるのか、あるいは、特定の条件下、たとえば、本件裁判事件におけるような、先行医薬品が後の延長登録出願の対象の特許権の技術的範囲には含まれないときには「医薬品」とすることを認めるのか、等々考えられるが、ケースによっていずれかを選ぶとすることは、法の安定性からも、考えにくい。改訂審査基準の公表が待たれる。

平成23年5月27日

青山特許事務所
弁理士 田村恭生

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