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【米国】「米国特許法改正~登録後再審査制度の改正~」

IPニュース 2011.11.19
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1.改正に至る経緯

 

米国では特許を産業政策的意図の観点ではなく、個人財産として厚く保護しているため、一旦成立した特許を無効にする方法は不十分であった。
改正前のUSPTOに対する異議申立手続としては、査定系再審査(Ex Parte Reexamination)と当事者系再審査(Inter Partes Reexamination)が設けられていた。
査定系再審査(Ex Parte Reexamination)は、第三者が他人の特許に対する異議申立手段として請求することができるが、第三者は手続にごくわずかしか関与できない。
このため、日本や欧州から、第三者が十分に関与できる異議申立手段を設ける強い要求があり、1999年法改正により第三者の関与が保証された当事者系再審査(Inter Partes Reexamination)が設けられた。
しかしながら、いずれの再審査制度も、根拠が特許又は刊行物に限定されており、かつ、ディスカバリー(証拠開示)もない等、効果的な手段ではなかった。このため、特許無効の争いは訴訟によることが多く、訴訟に費やす費用や時間が問題となっていた。
このような状況下、USPTOで特許の有効性を十分に判断できるように、特許後の異議申立制度を充実させることが必要とされてきた。

 

2.改正の要点
上記のような米国特許法における問題点を是正すべく、2011年9月16日に制定された法改正では特許後の手続について改正が成された。すなわち、新たに利用できる登録後の手続として特許付与後レビュー(Post-Grant Review)、当事者系レビュー(Inter Partes Review)、及び補充審査(Supplemental Examination)の3つが規定された。
特許付与後レビュー(Post-Grant Review)は、ほとんどの無効理由について申立を行うことができ、又、限定的ではあるがディスカバリーも行われ、さらに和解の手段を用いることもできるため、従来の再審査制度よりも効果的な異議申立手段である。ただし、請求可能期間が特許の発行日から9ヶ月以内に限定され、又、申立人が主張し、又は合理的に主張しえた理由についてはエストッペル(禁反言)の効果が働き、その後の民事訴訟等においてこれらの理由に基づいて同一クレームについて無効を主張することができない等、申立人が請求前に留意すべき点も多い。
当事者系レビュー(Inter Partes Review)は、特許の発行の9ヶ月後、又は特許付与後レビュー(Post-Grant Review)の終了後のいずれか遅い方の後に請求することができる制度である。改正前の当事者系再審査(Inter Partes Reexamination)に代わる手続であるが、特許付与後レビュー(Post-Grant Review)の導入に伴って改正が成された。特許又は刊行物のみを根拠とできる点は当事者系再審査(Inter Partes Reexamination)と同様であるが、ディスカバリーや和解等について新たに規定されている。特許付与後レビュー(Post-Grant Review)と同様のエストッペルが規定されており、注意を要する。
補充審査(Supplemental Examination)は、上記2つのレビュー制度と異なり、審査段階における特許権者の瑕疵を是正するものであり、訴訟における不公正行為の抗弁を減少させる目的を有する。特許権者のみが特許期間中に請求することができ、請求の根拠は特許又は刊行物に限定されない。これにより、特許権者が自発的に特許の瑕疵を是正し、侵害訴訟において特許が権利行使不能になるリスクを未然に防ぐことができる。
新たに導入された2つのレビュー制度により、USPTOにおいて特許の有効性を判断するケースの増加が期待される。又、補充審査制度の導入により、侵害訴訟における不公正行為の抗弁が減少し、訴訟の迅速化が図られることが期待される。
なお、従来の査定系再審査(Ex Parte Reexamination)は大きな改正はなく維持され、又、当事者系再審査(Inter Partes Reexamination)は移行期間を経て廃止される。

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秋山 信彦

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