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【米国】「米国特許制度の変遷」

IPニュース 2011.11.19
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米国特許制度の変遷

1.第1次プロパテント時代(1790年~1930年頃)
1776年に独立を果たした米国は、1790年に連邦特許法を設立し、1929年の世界恐慌が起こるまで特許を奨励するプロパテント政策を続けた。

2.アンチパテント時代(1930年頃~1980年頃)
1929年の世界恐慌の一因は大企業による市場の独占であるという分析に基づき、米国政府は特許を抑制するアンチパテント時代を1979年まで続けた。

3.第2次プロパテント時代(1980年頃~2000年頃)
1970年代に貿易収支が赤字になったことを契機に、米国政府は政策転換をし、1979年からプロパテント時代へ入った。この結果、米国産業は回復したものの、行き過ぎた特許保護政策の問題点として「質の悪い特許の増加」および「悪質な侵害訴訟の多発」が2000年頃から議論され始めた。

4.適正化時代(2000年頃~現在)
2004年に全米科学アカデミーが発表した「21世紀の特許制度」を受けて、2005年に最初の米国特許法改正案が議会に提出され、最終的に2011年に米国特許法改正が行われた。

参考資料:eBay判決の概要 [eBay Inc. v. MercExchange, L.L.C. (2006)]

1.背景
MercExcahnge社は、ビジネス方法特許第5,845,265号(265特許)の所有者である。一方、eBay社は買い手が販売を希望する商品を出品できるWebサイト(オークションサイト)を運営している。MercExcahnge社はeBay社のオークションサイトにおける「Buy It Now」機能が特許権を侵害するものとして、ライセンス交渉を試みたものの、条件が見合わず契約に至らなかった。

2.地裁の判断
2001年9月26日、MercExcahnge社は、eBay社の「Buy It Now」機能が265特許を侵害するとしてバージニア州連邦地裁に提訴した。地裁は、265特許は有効であり故意の侵害もあると判断し、MercExcahnge社の損害賠償請求を認めた(2950万ドル、約30億円)。その直後にMercExchange社は当然のように差止を要求した。
しかし地裁は、MercExchange社はライセンス専門会社で特許を実施していないので損害賠償がより適切な救済である点、また265特許は問題の多いビジネスモデル特許でクレーム範囲が不明確な点から、米国特許法第283条の規定に基づく差止を認めなかった。

3.高裁の判断
MercExcahnge社は差止が認められなかったことに対して、eBay社は地裁の特許有効性の判断に誤りがあるとして、また損害賠償命令を不服として、それぞれCAFCへ控訴した。CAFCは、特許の有効性及び損害賠償の点で地裁の判決を支持した。さらに、CAFCは地裁とは逆に、「特許有効で特許侵害があれば差止を認める」というこれまでの特許訴訟における一般原則に基づいて地裁判決を逆転させ、eBay社に対する永久差止を認めた。eBay社はこれを不服として最高裁判所に上告した。

4.最高裁の判断
2006年5月15日、最高裁は、米国特許法第283条が「裁判所は衡平法の原則に沿って差止を認めても良い(may grant)… 」と規定している点を挙げた上で、特許侵害訴訟においても、衡平法の長い歴史の中で確立された原理を適用すべきであるから、永久差止にあたって特許権者は以下の4つの事項を立証しなければならないと判示した。
①永久差止を認めなければ、原告に回復不可能な損害が生じること
②原告の損害を賠償するのに、法による救済(損害賠償等)が不十分であること
③「永久差止が下され場合に被告の被る困難」と「原告の損害」を比較考量すると、
被告の困難の方がより小さいこと
④永久差止命令によって、公共の利益が害されないこと
そして最高裁は、地裁およびCAFCはいずれも上記の4つの要件を考慮していないので、それぞれの判決は誤っているとして破棄し、地裁へ差し戻す結論を下した。

5.その後
2007年7月30日、地裁は永久差止命令を棄却するとの判示を行った。地裁は上記4要件を適用した上で、MercExchange社がライセンスを供与しようと企図していたことを考えれば、金銭的損害賠償によって損害を補償するに十分な救済が提供されると判示した。
2008年2月28日、この訴訟は取り下げられ、紛争は和解によって決着した。Merc
Exchange社は問題の265特許をeBay社に譲渡した。和解協定のそれ以上の詳細は秘密とされている。

以上

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菊地 拓弥

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