2026.04.14

【中国】専利審査指南改正内容

2026年1月1日付けで改正専利審査指南が施行されました。主な改正内容は以下の通りです。

I.専利出願手続の審査
 1.発明者情報に関する要求事項(第一部分第一章 4.1.2
(1)発明者は自然人(個人)に限定されることを明確化。これにより、AI、事業体やグループを発明者にできないことが明示された。
(2)発明者全員の身分情報の提出が必須になった。
 【改正前】
 第一発明者についてのみ、国籍を記入。
 第一発明者が中国国籍である場合、身分証明書類の番号の記入が必要。
 【改正後】
 発明者全員の国籍の記入が必要。
 中国国籍の発明者全員について身分証明書類の番号の記入が必要。外国人発明者については、身分証明書類の番号は不要。

 2.明細書の割増料金の算定の改訂(第三部分第一章 7.3、第五部分第二章 1
 【改正前】
 ・対象頁数:明細書(図面・配列表を含む)の総頁数
 ・割増料金の対象:明細書の30枚を超える部分
 ・配列表の特例:国際出願の中国国内移行の場合、配列表は400頁を上限として計算
(400頁を超える場合、400頁として取り扱う)
 【改正後】
 ① 配列表をコンピュータで読み取れる形式で提出する場合
 ・対象頁数:明細書(図面を含む)の頁数のみ
  ※配列表の頁数は含まれない
 ・割増料金の対象:明細書の30枚を超える部分
 ② 配列表を紙で提出する場合
 ・対象頁数:明細書(図面・配列表を含む)の総頁数
 ・割増料金の対象:明細書の30枚を超える部分
 ・配列表の特例:なし

 3.PTAにおける「合理的な遅延」の態様の追加(第五部分第九章 2.2.1
 「合理的な遅延」の態様に、不服審判請求人が、審査段階において提出していなかった理由・証拠を不服審判段階で新たに提出し、その理由・証拠により拒絶が取り消された場合に生じる遅延が追加された。

II.同一発明創作(同日出願)の審査(第二部分第三章 6.2.2
 特許出願と実用新案出願とを同日に行った場合の取り扱い規定を変更。
 【改正前】
 実用新案権が登録された後、*特許出願について権利付与の見込みが判断された場合、特許出願を補正することにより実用新案権と**特許権の両方を取得可能であった。
 【改正後】
 特許権を取得するためには、実用新案権を放棄しなければならず、実用新案権と特許権の両方を同時に維持することはできない。
(*「特許出願」は、「専利審査指南」における「発明専利出願」に相当し、**「特許権」は、「専利審査指南」における「発明専利権」に相当する)

III.進歩性の審査の審査基準・事例の追加(第二部分第四章 6.4
(1)審査基準
 技術的課題の解決に寄与しない構成は、請求項に記載されていても、発明の進歩性に影響を与えないことが明確化された。
(2)事例:カメラの発明に関する事例が追加

IV.コンピュータ、AI、及びビットストリームに関連する発明の審査
 1.公序良俗違反(専利法第5条)の審査基準及び事例の追加(第二部分第九章 6.2 (1)
(1)審査基準
 アルゴリズムの特徴やビジネスルールの特徴を含む発明が、データ収集、ラベル管理、ルール設定などにおいて、法律若しくは公序良俗に違反する内容、又は公共の利益を害する内容を含む場合、専利法第5条第1項の規定に基づき、専利権を付与することはできない。
(2)事例
 例1:ビッグデータに基づく売り場内のマットレス販売支援システム(公序良俗違反)
 例2:無人運転車両の緊急時意思決定モデルの構築方法(公序良俗違反)

 2.進歩性に関する審査事例の追加(第二部分第九章 6.2 (2)

 例18:船舶の数を識別する方法(進歩性×)
 例19:廃鉄の等級分類用ニューラルネットワークモデルの構築方法(進歩性〇)

 3.明細書の記載要件に関する記載の追加(第二部分第九章 6.3.1
 アルゴリズムや学習モデルは、その内部における処理過程が外部からは直観的に把握し難い、いわゆる「ブラックボックス」と呼ばれる性質を有している。このような性質は、専利制度における明細書の記載要件の適用に関し、解釈上及び運用上の困難を生じさせるおそれがある。このような困難性に対応するため、今回の改正では、記載要件が以下のように明確化された。
・発明がAIモデルの構築や学習に関する場合、モデルを構成する各モジュールの構成、モジュール間の階層構造及び接続関係、学習手順やパラメータなどを明細書に記載する必要がある。
・発明が、具体的な応用分野や事例におけるAIモデルやアルゴリズムの適用に関する場合、入出力データの内容や内在的な関連性などを明細書に記載する必要がある。

 4.実施可能要件に関する審査基準及び事例の追加(第二部分第九章 6.3.3
 例20:顔認識特徴を生成するための方法(実施可能要件〇)
 例21:生体情報に基づく癌予測方法(実施可能要件×)

 5.ビットストリームを含む発明に関する審査基準の追加(第二部分第九章 7
・単なるビットストリーム自体は専利権の保護対象とならない
・特定のビットストリームを生成する動画のエンコード/デコード方法が専利法上の「発明」に該当する場合、当該方法によって限定されるビットストリームの保存方法及び伝送方法、並びに当該ビットストリームを保存するコンピュータ可読記録媒体は、特許権の保護対象となる
・ビットストリームを含む発明を規定する請求項の記載例(第二部分第九章 7.2.2)

V.植物関連発明の審査(第二部分第一章 4.4、第二部分第十章 9.1.2.3
 1.改訂の目的
 植物品種の定義において、人工的技術介入を明確化。それにより種子法と棲み分け、補完し合うようにする。
(1)第二部分第一章 4.4
 【改正前】
 「専利法でいう植物とは、光合成により、水、二酸化炭素及び無機塩などの無機物で炭水化物、タンパク質を合成して生命を維持することができ、通常は移動しない生物をいう。」
 【改正後】
 「専利法でいう植物品種とは、人工的な選抜育種または発見を経て改良され、形態的特徴と生物学的特性が一致し、遺伝的形質が比較的安定している植物集団をいう。」
(2)第二部分第十章 9.1.2.3
・植物品種の判断原則を明記。
・天然の野生植物は科学的発見に該当し、専利権を付与できないが、野生植物が人工選抜・改良を経て産業上の利用価値を有する場合はその植物自体が特許権の保護対象となり得ることが追加された。

VI.無効審判請求の審査
 1.「一事不再理」の原則について(第四部分第三章 2.1及び3.3
 一事不再理の適用対象が、「実質的に同一の」理由及び証拠にまで広がった。
 【改正前】
「同一の理由及び証拠に基づく無効審判請求が更に行われた場合」
 【改正後】
「同一又は実質的に同一の理由及び証拠に基づく無効審判請求が更に行われた場合」

 2.無効審判請求人の資格(第四部分第三章 3.2

(1)改訂の内容
 「無効審判請求人の資格」を有さない態様に「無効審判請求の提出が請求人の真意の表示ではない場合」が追加された。
(2)改訂の目的
 他人名義を詐称して無効審判請求を行うことを防止する。
(無効審判請求人の本人確認が厳しくなっており、ダミーによる無効審判請求は難しくなる傾向にあると思われる)

 3.無効審判手続における専利書類の補正*(第四部分第三章 4.6)について、「4.6.4 補正書類の提出」を新設
   (*日本における無効審判段階の「訂正」に相当する)
(1)新設の内容
 4.6.4 補正書類の提出
・専利権者が請求項を補正する場合には、その全文の差し替え頁及び補正対照表を提出しなければならない。
・専利権者が同一の無効宣告請求の審理手続において提出した複数の補正文書がすべて本章第4.6.3節の規定に合致する場合には、最後に提出された補正文書に準ずるものとし、それ以外の補正文書は審査の対象としない。
(2)新設の目的
 請求項の補正内容の不明確さに起因する紛争を未然に防ぐとともに、専利権者による頻繁かつ戦略的な訂正の乱用の抑制を図る。

参照:
・「専利審査指南」の改正に関する説明(日本語仮訳):ジェトロ北京事務所
・「専利審査指南」の改正に関する国家知識産権局の決定(局令第84号)(日本語仮訳):ジェトロ北京事務所
・「専利審査指南」改正対照表(日本語仮訳):ジェトロ北京事務所