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【日本】判決要約:「角度調整金具用揺動アーム」事件(意匠)

IPニュース 2012.07.02
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判決年月日 平成24年5月24日
事件番号 平成23年(ワ)第9476号 意匠権侵害差止請求事件
担当部 大阪地方裁判所第26民事部

1.

本件は,意匠に係る物品を「角度調整金具用揺動アーム」とする部分意匠の意匠権(登録番号1399739号)について専用実施権を有する原告が,被告に対し,被告製品1~3の製造等の差止めを求め,裁判所が,被告製品1,2は本件意匠に類似するものと認めることができ,被告製品3は本件意匠に類似するものと認めることができない,とした事例。

2.本件意匠
本件部分意匠の意匠権は,角度調整金具用揺動アームにおける,特にギヤ板部(符号2で示す箇所)の意匠に関するものである。

本件意匠(以下の本件正面図を参照)は,以下の基本的構成態様,具体的構成態様を有する。

ア 基本的構成態様
(ア) 正面視において,縦長であり,上方にいくにしたがって左右幅がわずかに減少する形状である。
(イ) 右側面には,複数個のギア歯が列設され,歯面がゆるやかな凹状として形成されている。
(ウ) 左側面には,滑らかで,ゆるやかな凸弯曲の当接面が形成されている。
(エ) 左右の各側面視における輪郭は,縦横比の差が小さな長方形である。
(オ) 平面視及び底面視における輪郭は,縦長の長方形である。
イ 具体的構成態様
(ア) 頂部から歯面の上端まで下方に傾斜する,平滑な上傾斜面が形成されている。
(イ) ギア歯の数は6個である。
(ウ) 正面視において,歯面の下端から幅方向の略半分まで左下方へ傾斜する,平滑な下傾斜面が形成されており,当該下傾斜面の下端は,下方に凸の略半円形状に形成された膨出部に繋がる。

3.裁判所の判断

(1)被告意匠1
被告意匠1(ロ-1号意匠)は,本件意匠と基本的構成態様及び具体的構成態様において共通するものであり,具体的構成態様における差違は,需要者の注意を惹き付けるものではなく,両意匠の差異点は,両意匠の共通点を凌駕するものではないから,需要者に異なる印象を与えない。したがって,被告意匠1と本件意匠は,全体として需要者の視覚を通じて起こさせる美感を共通にし,類似するというべきである。

(2)被告意匠2
被告意匠2(ロ-2号意匠)は,ロ-1号意匠のうち以下の赤色部分を切除改変したものにすぎない。

上記改変部分のうち下突隆部の下り勾配線を設けた部分は,本件意匠において部分意匠とされた範囲外の部分であるから,類否判断とは関係がない。また,上突隆部の下り勾配線を設けた部分も,上端の限られた領域における差違にすぎず,両側面視,平面視及び底面視ではほとんど目立たないものであることからしても,全体の美感を左右するものではない。したがって,上記改変部分が類否判断に影響を与えるものであるということはできない。
よって,ロ-2号意匠と本件意匠は,本件意匠の要部において構成態様を共通にするものであり,具体的構成態様における差違は,需要者の注意を惹き付けるものではなく,両意匠の差異点は,両意匠の共通点を凌駕するものではないから,需要者に異なる印象を与えないということができる。したがって,ロ-2号意匠と本件意匠は,全体として需要者の視覚を通じて起こさせる美感を共通にしているということができるから,類似するというべきである。

(3)被告意匠3

被告意匠3(ロ-3号意匠)は,ロ-2号意匠のうち以下の赤色部分を切除改変したものにすぎない

本件意匠は,上下突隆部が,ラジアル外方向へ向けて突出しているため,ギア部の両端から,ギア部全体を,両手を広げて支えるという印象を与えていたところ,ロ-1号意匠,ロ-2号意匠は,これと同じ印象を与えるものであるが(この点は,本件意匠と全く同じ
である。),上記改変では,上下突隆部のギア部側を小さく略U字形に切除した結果,ギア部の両端から,突隆部によって,挟み込むといった異なる印象を与えている。また,窪部の切欠きの程度も小さいが,要部であるギア歯の両端という,看者の注意が惹かれる箇所でもあり,本件意匠が部分意匠であり,上下突隆部はその要部であることからすると,その対比において,上記窪部の存在が,ロ-3号意匠に占める程度は低いとはいえない。これらのことからすると,上記改変部分は,正面視の左上に,細かいギア歯の一定程度のまとまりという特徴あるその余の構成態様の共通性を打ち消すものであるとまではいえないものの,上記改変部分に係る差異点は,本件意匠とロ-3号意匠の共通点を凌駕するということができる。以上によれば,ロ-3号意匠と本件意匠は,本件意匠の要部において構成態様を共通にするものであるが,両意匠の差異点は,両意匠の共通点を凌駕するということができる。したがって,ロ-3号意匠と本件意匠は,全体として需要者の視覚を
通じて起こさせる美感を異にしているということができるから,類似しないというべきである。

4.判決文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120529155135.pdf

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