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【日本】判決要約:「地盤改良工法」事件(特許)

IPニュース 2012.07.31
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判決年月日 平成24年6月28日
事件番号 平成23年(ネ)第10060号 特許権侵害差止等反訴請求控訴事件
担当部 知的財産口頭裁判所第3部

1.

本件は,発明の名称を「地盤改良工法」とする特許権(特許権2:特許第2783525号)の侵害差止等請求訴訟の控訴審において,被告方法は特許発明の技術的範囲に属さないとする一審判決が維持された事例。

2.本件特許
本件特許の請求項1に係る発明(以下,「本件発明」という。)は以下のとおりである。

【請求項1】

建造物の基礎を構築すべき位置の地盤の土壌を掘削・排土して所定開口面積で且つ所定深さの空所(2)を形成し,該空所(2)内に先に掘削・排土した土壌(S)とセメント等の固化材(C)と水(W)とをそれぞれ所定割合づつ投入する際に,該水(W)の量を前記土壌(S)中に含まれる含水量に応じて増減させ,それらの材料を該空所(2)内で混合・撹拌して,調整含水比を所定値に調整した固化材・土壌混合スラリー(SC)を生成し,該固化材・土壌混合スラリー(SC)を固化させる,ことを特徴とする地盤改良工法。

3.侵害被疑方法
侵害被疑方法(イ号方法)は,下図に示す工程(a)~(e)の順で実行されるものであった。

4.裁判所の判断

(a)直接侵害

裁判所は,「イ号方法における『上部空所(11)』は支持層までの深さを有するものではなく,『上部空所(11)の下方』は排土されないことから,イ号方法は,構成要件Aの『空所』には当たらない。そうすると,縦穴形成工程a1と埋め戻し工程a2の工程の有無にかかわらず,イ号方法は,構成要件Aを充足しない」として,被告方法は本件発明の技術的範囲に属さないとした。

(b)迂回論

イ号方法は,中間に別個の無用ないし不利な構成(部材,物質,工程)を介在させた迂回方法であるとの主張に対し,裁判所は,「被告の行為が原告の有する特許権を侵害するか否かは,当該被告の行為が,専ら,原告の有する特許発明の技術的範囲に属するか否か(すなわち,発明の特許請求の範囲の記載に係る構成のすべてを充足するか否か,又は特許発明の均等の範囲に含まれるか否か)によって判断されるべきであって,発明の特許請求の範囲の記載に係る構成の全てを充足しない場合においてもなお,『迂回』に当たることのみを理由として特許権を侵害するとする原告の主張は,その主張それ自体において失当である(最三小判平成10年2月24日民集52巻1号113頁参照)」と判断した。

(c)均等論

控訴審で追加された均等論に基づく侵害の主張に対し,裁判所は,第2要件(置換可能性の有無)に関して,「イ号方法の『縦穴形成工程a1,埋め戻し工程a2』は,上部空所(11)の下方に,支持層まで到達する溝あるいは縦穴(12)を部分的に形成して,支持層の確認を行い,掘削土は排土せずに埋め戻すのであるから,その溝あるいは縦穴(12)の大きさにかかわらず,イ号方法において,一旦排土した土壌とセメント等の固化材と水とを所定割合ずつ投入して,空所内で混合・撹拌して固化材・土壌混同スラリーを固化させるという作用効果は得ることはできず,掘削した土壌と固化材とを均一に混合させることができるようにするとは考え難い。したがって,本件発明2の構成要件Aをイ号方法の『縦穴形成工程a1,埋め戻し工程a2』に置き換えることにより,本件発明2の目的を達することができるとはいえない。」として,イ号方法について本件発明に関する均等侵害が成立するという主張は認められない,とした。

5.判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120703114851.pdf

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