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【米国】 胎児ゲノムの非侵襲的出生前検査に係る特許の有効性に関するCAFC判決

IPニュース 2015.11.17
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ARIOSA DIAGNOSTICS, INC. v. SEQUENOM, INC.

(Nos. 2014-1139, -1144, Decided June 12, 2015)

 2015年6月12日、CAFCは、Ariosa Diagnostic, Inc. v. Sequenom, Inc. において、米国特許第6,258,540号特許 (‘540特許) における、母体の血漿または血清における胎児由来の父系遺伝核酸を検出する方法(胎児ゲノムの非侵襲的出生前検査)に係るクレームは特許可能な対象ではないと判断した。

 

[CAFCの判断]

‘540 特許の請求項1 は以下の通りである。

A method for detecting a paternally inherited nucleic acid of fetal origin performed on a maternal serum or plasma sample from a pregnant female, which method comprises amplifying a paternally inherited nucleic acid from the serum or plasma sample and detecting the presence of a paternally inherited nucleic acid of fetal origin in the sample.

(妊婦由来の母系の血清または血漿サンプルにおいて、胎児由来の父系遺伝核酸を検出する方法であって、前記血清または血漿サンプルから父系遺伝核酸を増幅すること、および前記サンプル中の胎児由来の父系遺伝核酸の存在を検出することを含む、方法。)

CAFCは、Mayo判決のTwo-part testを適用し、方法特許のクレームが自然発生現象で開始し終了するものであり、その方法自体が当該技術分野における “conventional, routine, and well-understood applications” である場合には、その特許は特許適格性と欠く、とした。CAFCによる’540特許の2ステップの基準へのあてはめは以下の通りである。

・第1ステップ

本方法は母系の血清または血漿サンプルからcffDNA(cell-free fetal DNA: 無細胞胎児DNA)を採取することから開始する。cffDNAは、これまで医療廃棄物として処分されていた母体の血液サンプルの一部分から発見されており、このことからから、母体の血液中のcffDNAの存在が自然発生現象であることは明白である。また、本方法は父系遺伝核酸の存在を検出することで終了する。従って、方法特許のクレームであって、自然発生現象で開始し終了するものである。また、発明者らがcffDNAの遺伝情報を何ら変化も構築もしていないことも重要な点である。

・第2ステップ「発明概念 (inventive concept)」

自然発生現象を含む方法クレームの場合、クレームはその発明を「新規かつ有用」にする要素を含むことが要求される。本件では、特許出願の日に新規かつ有用であった対象は、母親の血漿又は血清にcffDNAが存在するという発見のみである。父系遺伝核酸を増幅し、検出する方法は、標準的なPCRなどの核酸増幅方法とゲル電気泳動などの核酸検出方法であるため、「新規かつ有用」とはいえない。従って、本方法は、自然発生現象にroutineかつconventionalな工程を付加しただけであり、inventive conceptを提供するものではない。

以上の分析に基づき、CAFCは本件発明が特許可能な対象ではないと判断した。

さらに、CAFCは自然現象等の「独占 (preemption)」の問題についても言及した。Sequenom社は、クレームに記載の方法は代替方法を排除するものではないので「独占」には該当しないと反論したが、CAFCはこれを退けた。この点、CAFCは、特許適格性の判断において「独占」の問題は内在しているものであり、Mayoテストにより特許適格性がないとされる場合には「独占」の問題は意味がなくなると説明した。

尚、今回の判決で、CAFCは、本件の診断方法が出生前ケアに革命をもたらした新しい方法であり、価値のある貢献をもたらしたものであることは認めている。裏を返せば、革新的又は聡明な発見であったとしても、それ自体では101条の要件を満たさないと結論付けたことになる。

ARIOSA DIAGNOSTICS, INC. v. SEQUENOM, INC._CAFC判決

以 上

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