2026年2月3日付けEPO技術審判合議体の中間審決(T873/24)において、新規事項追加の文脈におけるクレーム解釈に関して、拡大審判部に以下の質問が付託されました(G 1/26)。
1. 付託を行う審判部が、問題となる法律上の論点について、当該審判部に係属中の事件の文脈から生じたものであり、かつ、手続の状況に照らして次にその論点を審理・判断することが合理的であることを示した場合、EPC第112条(1)にいう「決定が必要」であると認められるか。
2. (a) クレームが特許性判断の出発点かつ基礎であることからすると、明細書又は図面にのみ記載された事項をクレームの解釈に取り込むことは、原則として許されないと解すべきか。特に、その結果としてクレーム中の文言が限定的に解釈される場合はどうか。
2. (b) 質問2(a)の答えが「いいえ」である場合、クレームの解釈は、クレームの文言を読むことと、明細書及び図面を参酌することとを、一体的な過程として行った結果であると解すべきか。また、クレームが特許性判断の出発点かつ基礎であるという原則は、特許全体からは導き出せるものの、クレーム中の文言についての当業者の一般的な技術的理解に明らかに反する解釈のみを排除するものなのか。
3. (a) EPC第123条(2)の適合性を判断するにあたり、クレームで用いられている用語については、クレームの文言のみを基礎として、当業者にとって技術的に意味をなすすべての解釈を考慮しなければならないか。
3. (b) 質問3(a)の答えが「いいえ」である場合、特許明細書全体を踏まえて確定されるクレーム発明の解釈が出願時の出願書類から直接かつ一義的に導き出せるものであるだけで足りるか。
質問1は手続面で付託の適法性を問うものです。一般的に拡大審判部への付託は審判における不確定要素が付託内容に絞られた時点でなされますが、本件ではその前段階でなされました。質問2および3は、クレーム解釈における明細書等の参酌に関する拡大審判部審決G 1/24を受けたものです。G 1/24の基準を新規事項追加(EPC 123条(2)項)の文脈にそのまま適用できるのかという疑問が生じていました。どのような審決がなされるのか注目されます。
(参考)
EPO HP:Referral to the Enlarged Board of Appeal – G 1/26 (“Coated steel strips”) (2026.6.3)
(稗田 美香)