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仕事をしながら資格取得後も、勉強に終わりはない
私は大学院在学中に有機合成化学を専攻しており、製薬会社や化学メーカーに向けて就職活動をしていたのですが、なんとなく自分は実験や研究開発に向いているだろうか?という不安がありました。そのことを研究室の教授に相談したところ、こういう道もあるよと紹介していただいたのが、青山特許事務所です。その頃はまだ知的財産になじみがなく、大学の特別授業で一度だけ弁理士さんが講義をされた記憶がうっすらとあった程度でした。しかし、化学の知識を活かすことができ、法律も扱う弁理士の仕事に魅力を感じて応募したところ、無事、採用していただきました。2004年のことでした。
大学院での研究分野に関連して、所属したのはライフサイエンス分野の特許を扱うグループでした。上司の指導のもと海外からの特許明細書の和訳から明細書の構成や書き方を身につけながら、中間対応、国内顧客の特許出願など段階的に経験を積んでいきました。並行して弁理士試験の勉強を進め、2008年に合格。仕事と受験勉強の両立は大変だったでしょうと言われることがありますが、仕事での調べ物が受験勉強に重なったり、勉強したことが仕事に役立ったりで、相乗効果があったと思います。
弁理士資格を取得した後は、海外の特許実務を勉強するため欧州に4か月間の研修に行かせていただきました。海外案件が大きな割合を占めるライフサイエンス分野ではそのときに得た経験や人とのつながりが今でも業務に役立っています。その後は審判や訴訟など幅広い業務にも携わることができました。
2022年には米国ワシントンD.C.の法律事務所に業務出向する機会にも恵まれ、そこで半年間、米国の代理人事務所に入り込んで、知見やノウハウ、その仕事ぶりを目の当たりにしたことは、とても貴重な経験でした。滞在中に、日本の弁理士に当たる米国パテントエージェントの試験に合格することができ、受験を通して米国の特許法をより深く吸収することができました。大学時代のひとつのきっかけで知財の世界に飛び込み多くの経験をさせていただきましたが、20年以上経った今でもまだまだ勉強することは尽きることがなく、奥の深い世界だなと日々感じています。
知識や経験を共有しながら後進を育成
米国への業務出向を機にパートナーに昇格しました。「青山特許事務所」という大きな看板を支える要の一人として誇らしくも、大きな責任を伴う役割です。パートナーは内外ともに事務所を代表する顔ですので、これまでの知識や経験に基づいて顧客のニーズに見合った対応策を提案する一方、後進を育成して組織としての継続性に貢献することも重要です。
次世代の育成は、学校や受験機関と違ってOJTが基本となります。グループのメンバーには単に知識を伝えるのではなく、なぜそうなるかを自ら考え、独力で調べる習慣を身につけてもらうように心がけています。それによって、様々な状況に対応できる応用力を養ってもらうようにしています。担当案件を抱えながらのプレイング・マネージャーなので大変な面はありますが、知識や経験を次世代にしっかり引き継いでいくことはやりがいのある仕事です。
青山特許事務所では、グループの売上向上を優先課題にはせず、顧客の目線でどのような対応がベターなのかを常に念頭におきながら、組織としての継続性や調和に重きをおいています。まわりと助け合って永く仕事をするところが、青山特許事務所らしさではないかと思います。
ビジネスパーソンとして活躍の場を世界へ
青山特許事務所は創業者である青山先生の時代から海外との取引が多く、海外の顧客も国内と同様に重要な取引先です。そのため年に少なくとも一度、技術分野ごとに海外の顧客や代理人事務所を訪問しています。そこで日々の業務についてヒアリングし、日本の知財実務や審判決例を紹介しています。他方、各国の取引先代理人事務所の方も青山特許事務所に定期的に来訪され、現地の知財実務のアップデートや意見交換の場を提供いただいています。
明細書を書いて権利化するのが弁理士の仕事の基本ですが、そこで得た専門知識やノウハウを強みとして、法制度の異なる海外の顧客や代理人にわかりやすく説明し、顧客のニーズに応じて権利を取得・活用できるようにすることも、この仕事の醍醐味のひとつです。知財の専門知識を武器に、ビジネスパーソンとしても活躍の場が世界に広がります。
これからも大切にしたい、「和をもって働く」という理念
私が入社した当時のエピソードとして、よく覚えていることがあります。青山先生と廊下ですれ違ったときに、入社したばかりの私の名前を呼んで、気さくにお声がけいただいたことです。すでに200名を優に超える規模になっていましたので、新人の名前まで覚えていらっしゃったことに、とても驚きました。青山特許事務所のアットホームな社風は、青山先生のこういったお人柄から生まれたものだと思います。青山先生は「和をもって働く」という言葉を大切にされました。これからもまわりの人と和やかに、一体感をもって真摯な仕事をするという風土を継承していかなければならないと考えています。
一方で、新しい知識や技術を採り入れて進化していかなければなりません。私は今、AIを活用した業務効率化プロジェクトに携わっています。機械にできることは機械に任せて、人間がより付加価値の高い仕事に注力できる環境づくりに挑戦しています。AI活用という新たな挑戦を進めていくなかで、ともすれば人間関係が希薄になり、すれ違いが生じやすくなりがちですが、「和をもって働く」の精神を大切に、人間と新技術がうまく調和した環境を目指していきたいと思います。