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将来のアドバンテージを考えて、新卒入所
私の入所は2016年です。大学院に残って応用微生物学の研究を続けるという選択肢もありましたが、最終的に弁理士への道を選びました。メーカーへの就職は考えていませんでした。中途入所の多い特許業界ですが、あえて新卒入所を選んだのは、早くから実務経験を積めば将来のアドバンテージになると考えたからです。就職活動の際はいろいろな特許事務所を調べはしましたが、ライフサイエンスに関わる仕事ができる点に魅力を感じ、青山特許事務所に決めました。
入所してすぐの仕事は、英文明細書の日本語への翻訳でした。そして、1年目の途中からは拒絶理由通知書の英訳を含む中間処理対応、2年目ぐらいからは国内の出願明細書の作成補助と徐々に業務の幅が広がっていきました。実務をOJTで学びながら、並行して試験勉強をしたことで、経験と知識が着実に身についたと思っています。
試験勉強を本格的に始めたのは入所してからです。仕事が終わってから近くの予備校で自習したり、土日には講座を受けたりの毎日でした。とはいえ、最初の2年間は、さぼったり、やったりやらなかったりで、正直あまり身が入っていませんでした。これでは合格できないなと、本気になったのは3年目からです。そこからがんばって、合格したのは翌年の2019年です。
自ら企画する海外研修での学びが、これからの糧に
入所から8年目の2024年の9月~11月の2か月間、アメリカに海外研修に行かせてもらいました。青山特許事務所の海外研修の大きな特長は、研修プログラムの立案を全部、研修生自身に任せてもらえることです。行き先やどんなセミナーを受講するかだけでなく、時期や移動手段、宿泊先まで、すべて自分で考え、相談しながら決めていきます。訪問先へのアポイントも含めて、準備は全部自分でやる、そんな自主性重視の研修です。
メインの研修先は、普段からアメリカでの権利化でお世話になっているワシントンD.C.の現地代理人事務所を選びました。実際に顔を合わせて一緒に仕事をすることで、より実践的な知見を得たいと考えたからです。ただその滞在の前に、渡米後最初の10日間は日本人も多く参加する特許セミナーを受講し、その後、同僚と合流してサンフランシスコの特許事務所を表敬訪問する計画をしていました。そうした助走期間を経て、残りの1か月半は一人でワシントンD.C.に滞在しました。海外渡航自体初めてだったこともあり、研修の目的の一つは「海外に慣れること」でしたが、環境に慣れるだけでなく英語にもだんだんと馴染んでいくことができました。
ワシントンD.C.では、実際に私の担当案件を現地代理人と対面でやり取りできたことが、とても大きな収穫でした。こうして直接会うまでは、日本にいてメールでやり取りするだけでは、どうしても細かなニュアンスまでは伝わりにくく、こちらも正確に受け取るのが難しいと感じていました。でも実際にひざを交えて一緒に仕事をしたことで、お互いが納得しながら業務を進めるための工夫や姿勢を、より深く理解することができました。それに文化や人柄がわかり、信頼関係も築けたことで、帰国後のやり取りがスムーズになりました。
また、実際の案件について審査官インタビューする機会に恵まれたことも貴重な経験でした。審査官から直接話を伺うことで、何を懸念しているのかが伝わってきますし、どうすれば特許査定に近づけるかもより明確にわかります。書面だけでは伝わらない、人間的な感覚や判断の背景に触れることができ、あらためて審査官インタビューの有用性を実感しました。
こうした経験を通して、研修の他の目的だった「実務の流れを俯瞰的に理解すること」や「実務経験を学ぶこと」も達成できたと思っています。
野球部への参加から始まった、分野を超える繋がり
せっかくなので、仕事以外のもう少しラフな話もいたしましょう。
青山特許事務所では、所員同士のつながりも大切にしていて、新入所員歓迎会や忘年会、懇親会などの他、いくつか部活動もあります。なかでも野球部は特に活発で、私も参加しています。野球はまったくの未経験でしたが、誘われたら断らない性格なので、入所してすぐ、とりあえず参加してみました。それが今では部長を務めています。しかも、ポジションはキャッチャー。夏の間は特許庁主催の草野球大会(パテント杯)に参加するために毎週金曜日にナイター練習をしています。
でも、本音の目的は練習後のビール。参加メンバーはみんなそうだと思います(笑)。最近では若手メンバーの参加も増えてきて、チーム全体の士気も高まっています。おかげさまで、昨年2023年のパテント杯で見事3位に入賞し、青山特許事務所野球部として過去最高の成績を収めることができました。
そんな野球部ですが、実は仕事にもつながる場面が意外とあります。ビールを飲みながら先輩たちと何気ない話をしていると、ふと仕事に対する考え方を感じたり、社会人としての姿勢を学んだりすることもあります。普段なかなか得られない大事な気づきやヒントが得られています。それに最近はバイオと化学、機械と電気など、複数の技術領域にまたがる案件が増えてきました。そういったときに、野球部の飲み会で生まれる部門を超えた人間関係がとても役に立っています。雑談の延長にある信頼が、仕事の場でも確かな力になっていると感じます。
新卒入所のアドバンテージを活かしつつ、さらに一歩先へ
青山特許事務所で働く魅力は、1つ目はベテランと若手の距離が近いことです。300人を超える事務所なので、もちろん上下関係はありますが、その壁はあまり高くないと感じています。
入所3年目ぐらいに所内の業務効率化を検討するプロジェクトに参加しました。メンバーは10~30歳ほど年上の先輩方で構成されていましたが、私が提案した新しいツールが採用されたことがあります。若手の意見だからといってスルーされることはなく、良いと思ったらどんどん採り入れてくれる。そうした風土が、青山特許事務所にはあると感じています。
2つ目は、困ったことがあっても相談できる、あたたかい雰囲気があることです。実際に相談もしやすいし、忙しいなかでも時間を割いて親身になってアドバイスいただいています。そのおかげで、初めての仕事でも前向きにチャレンジできています。
3つ目は、毎年、優秀な新人が入ってくることです。新人が多く入所する4月は特に、初心に返って頑張ろうと改めて決意する時期です。彼らがまじめに仕事を覚えようとする姿勢や弁理士試験の勉強をしている姿を見て、いつもいい刺激をもらっています。自分もそうだったなと思い出し、自然と気持ちが引き締まります。
私も気づけば入所から10年が見えてきました。これまで新卒から実務経験を積み重ねてきたことは、自分にとって大きな強みだと感じています。今後はその経験を土台に、新たな技術領域やスキルに挑戦したいと思っています。これからも新人から刺激を受けながら、初心を忘れずに業務に取り組んでいきたいです。